2016.03.24 UP

子どもへの教育イベントを通じてキャリア形成に繋げる

キッズビジネスタウン®いちかわ実行委員会

毎年3月に2日間、千葉商科大学のキャンパスは「キッズビジネスタウン®いちかわ」として、「子どもたちがつくる、子どもたちの街」になります。地域の子どもたちがこの街の市民となり、労働や消費の体験を通して「社会の仕組み」を学びます。
このイベントを企画・運営しているのは、商経学部 近藤真唯専任講師のゼミナールの学生を中心とした実行委員会です。

2003年千葉商科大学から始まった教育的行事

千葉商科大学で「キッズビジネスタウン®いちかわ」(以下、KBT)の取り組みが始まったのは2003年3月。本学では同年2月、小学生を対象に簿記や税金、商品の販売などを授業形式で学習する公開講座「キッズビジネススクール」を開講しました。その中で、子どもたちが学んだ知識を実践させる必要性が高まり、キッズビジネススクール終了後、模擬商店街の運営からビジネスを体験的に学ぶイベントとしてKBTがスタートしました。

  • キッズビジネスタウン
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教員をめざす学生が"教える"を体験

KBTでは、子どもたちが共に働き、学び、触れ合い、遊ぶことにより、社会の仕組みを知ることを、学生スタッフがサポートします。近藤ゼミで教員をめざす学生たちを中心とした幹部スタッフは67人。近隣の大学や高校からも参加する一般スタッフを合わせると総勢300人以上がこのイベントの運営に携わっています。学生たちは、自らが担当する役割について指導ができるように準備することはもちろん、その役割を担当することにより、発生する問題を解決する能力を養い、さらには、子どもたちに社会の仕組みや働くことの楽しさなどを教える体験を将来に活かすことを目的にしています。

  • キッズビジネスタウン
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さまざまな角度から子どもたちをサポート、学生も社会に必要な力を学ぶ

KBTの関心は年々高まり、地域に根付いた活動になっています。2016年3月5、6日に開催された第14回KBTには、延べ1,350人の子どもたちが参加しました。
子どもたちはKBTの銀行、新聞社、花屋、食べもの屋など約70種類の店舗などで働き、その対価として街の地域通貨による給料を得て、納税や買い物をすることを体験。学生スタッフの役割は多岐にわたり、働く子どもたちをさまざまな角度からサポートします。担当する店舗などで仕事の説明、安全管理、作業の補助を行うスタッフは、子どもたちと一緒に作業するだけでなく、子どもたちが自ら考え行動することを促すことも重要な役割となっています。
子どもたちが社会を理解する一方で、子どもたちと接するスタッフも、イベントの運営を統括するスタッフも、コミュニケーションやマネジメントなど社会で必要な力を理解し、そのスキルを高めています。

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次回への引き継ぎと、経験を活かす教育実習

第14回KBTは大盛況のうちに終了しましたが、その直後から、次回の開催に向けて実行委員会は動き出します。4月には全体会議で引き継ぎを行い、9月からは毎週の定例会で議論を深めます。その間にも、担当ごとに作業を進め、その状況について情報を共有しながら、よりよいイベント運営をめざしていきます。
イベント終了後、実行委員会の中心として大役を果たした3年生は、春になるとすぐに教員への大きな関門となる教育実習に気持ちを切り替えています。子どもたちと接した経験、実行委員会の運営から身についた知識や力を教育実習で実践し、より確かなものにしていきます。

キッズビジネスタウン

学生の声

石井さんスタッフ全員に目を配り、全力でサポートするために、幹部スタッフの代表として自分がどう動けばよいかを常に考えていました。悩みや問題を抱えた仲間には時間をかけて話を聞くことが効果的であったこと、学生に限らずKBTに関係する多くの方々と接して人との関わり方も学ぶことができました。KBTを終え、参加した子どもたちはもちろん、スタッフの笑顔が見られたことが嬉しかったです。

商経学部商学科 石井麻由
(愛国高校出身)

稲毛田さん工房エリアには外部の団体と連携して実施するブースがありますが、今回新しく協力していただく団体への依頼や段取りに苦労しました。人間関係を築くことの難しさを知り、挨拶や礼儀を学びました。エリアの代表としては、組織を円滑に機能させることを目標に行動する中で、情報の共有、報告・連絡・相談が重要だということも理解することができました。

商経学部商学科 稲毛田大輝
(古河第一高校出身)

田中さん1年に及ぶKBTの準備はさまざまな問題が生じますが、提起された問題を正確に処理する能力を身に付けることを、自分の目標として活動してきました。何度失敗しても一つひとつの仕事を丁寧に行うことが問題を最小限に抑え、解決に導くことを学ぶことができ、日常でも丁寧さを心がけるようになりました。KBTは楽しいことばかりで、苦労したことはありません!

商経学部商学科 田中翔太郎
(千葉商科大学付属高校出身)

佐藤さんKBTをより良くしようとみんなで協力できたことが楽しかったです。私が担当した学びエリアでは、「現代技術論」という授業で学んだことを取り入れた「科学教室」を今回初めて実施しました。しかし、この新たな試みは、私たちが考えていたものとは差が生じてしまったところもありました。この経験から学んだことを、次回に引き継いでいきたと思います。

商経学部商学科 佐藤瑠美
(水沢商業高校出身)

鈴木さん私は備品の担当者として、各ブースで働くことを学ぶ子どもたちも、教えるスタッフも、不自由なく活動できるような準備を完璧に行うことが目標でした。当日を迎えるまでは辛いこともありましたが、子どもたちの楽しそうな姿を見ることができたのが嬉しく、努力や苦労をした先に達成感があることを実感しました。

商経学部商学科 鈴木夏未
(上田千曲高校出身)

日渡さん今回、KBTのウェブサイトをリニューアルしましたが、配色などは「映像情報処理」の授業で得た知識を活用して制作に取り組みました。保護者や一般スタッフへ発信するコンテンツの企画立案、文章も自分たちで考えましたが、時間がかかってしまうこともあり、いかに効率良く作業すればよいかを考えることが大事だと分かりました。

商経学部商学科 日渡菜緒
(三戸高校出身)

担当教員の声

今回のKBTには前回よりも多くの子どもたちが参加し、運営に携わる学生スタッフの人数も増えました。人が増えればイベントは盛り上がりますが、同時にさまざまなトラブルも発生します。そこにはトラブルの原因となる何らかの問題が潜んでいるので、学生たちにはその問題を発見し、解決するために、思考力・判断力・表現力が必要となります。1年間の取り組みの中でこの力を育んだ学生たちは、トラブルにもうまく対処できるようになりました。この経験を糧に、無限大に広がる自分の力を信じて社会に羽ばたいてほしいです。

商経学部 専任講師 近藤 真唯

近藤 真唯 専任講師

保護者の声

毎回、KBTに参加した子どもたちの保護者を対象に、アンケートを実施しています。「KBTが子どもたちのためになっていると思いますか?」の問いに対し、ほぼ100%が「はい」と答えています。その多くが、「働くからお金がもらえる、お金がもらえるから物が買えるという仕組みを知り、働く意味や楽しさを理解できる」、また、「自分で考え行動する、自分の力でやり遂げる経験ができる」ことを挙げています。

卒業生はいま

本学からはじまったKBTは、各地へと広がりを見せています。これは在学中にKBTを経験し、現在は教員として各地で活躍する卒業生たちの成果です。2014年度には千葉県内の高校で商業を教える卒業生たちが、千葉県産業教育フェアにおいて「キッズタウンinちば」の運営を担いました。
過去には本学卒業生向けにKBTの学習会を開催し、この参加者が教鞭をとる高校でイベントをスタートさせた例(秋田商業高校)もあります。

キッズビジネスタウンとは

(1)働くことの楽しさ、喜び、そして大切さを知る、(2)他の子供と協調して仕事を行い、相手を思いやる気持ちを育む、(3)食べ物や手作業製品の作り方を知り、物を大切にする気持ちを育む、(4)ビジネス(商業)のしくみ、ビジネスに必要な知識、技術の基礎を学ぶ、(5)職業の種類、仕事の資格などの学習方法(プロセス)を学ぶ、(6)臨機応変に対応する、ことを子どもたちが楽しみながら経験し、社会のしくみを学ぶ教育的行事です。