2015.10.22 UP

感性やメディアスキルを活かし、地域の展覧会を広める取り組み

政策情報学部 市川市文学ミュージアムでのイベント企画、広報活動

2015年6月13日から8月30日まで市川市文学ミュージアムで開催された「描くことが生きること—山下清とその仲間たちの作品展」で、政策情報学部の学生たちが関連イベント、広報企画を立案し、実施しました。
「若い人の発想と実行力で来場者を増やしたい」とする市川市文学ミュージアムの狙いから、まちづくりや表現を学ぶ同学部への依頼を受けたのは4月のこと。14名の学生が身に付けたメディアスキルを持ち寄り、展覧会を地域に広めていく挑戦が始まりました。

表現力と発信力、政策情報学部の学びを社会に活かす

現代の問題を解決し、より良い地域社会を実現するための政策や手法を学ぶ政策情報学部。ここで学ぶ学生たちにとって、地域と関わる活動に参加し、作品制作やイベント企画を経験することは、授業で学んだ知識やスキルが社会の課題に対してどのような形で活かされるのか、実践を通して確認する絶好の機会です。
近年、ゆるキャラをはじめ、アニメや漫画に登場する場所をまちおこしに活用する事例などからも、ITやメディアを活用した豊かな表現力、正しい情報発信のスキルを持つ人材がまちづくりには欠かせない重要なものになっている現在の社会。市川市文学ミュージアムからの依頼に応えるため、学生たちは各自が持つデザイン、イラスト、映像、CG、プログラミングなどの知識を集結し、多彩な企画を立案しました。

  • プレゼン風景
  • プレゼン風景
  • プレゼン風景

展覧会を盛り上げる多彩な企画をカタチにする

5月12日、学生たちは9つの企画を市川市文学ミュージアムの担当者に発表しました。実現に向けての審査を経て、最終的に採用されたのは、展覧会を告知するチラシとCM、展示品の作者を紹介する漫画の制作、山下清の絵をモチーフにしたちぎり絵としおり作りの体験、そして、絵を描きながら山下清が旅した世界をデジタル技術で体感するイベント「ライブペイント×インタラクション」の5企画です。
学生たちは各企画の実施に向けた準備をスタート。展覧会の開催まで約1ヶ月、授業で得たスキルを活かし制作に取り組みました。ミュージアムとのやり取りで、仕事のプロセス、対外的なコミュニケーションなどの実践スキルについても理解を深めていきました。

  • 制作風景
  • リハーサル

CMとチラシの制作で展覧会の開催をPR、体験型イベントも大成功

6月になり、2か月半にわたる展覧会が開幕すると、学生たちが制作したCMはJ:COMチャンネル(市川市・浦安市)で放送され、チラシは市川市内の中学校、高校に配布されました。漫画のリーフレットは来場者向けに会場で配布。著名な山下清と同じ施設で絵の才能を開花させた仲間たちを漫画で分かりやすく紹介するアイデアは学生ならではの視点と好評を得ました。
7月18日、19日には「ライブペイント×インタラクション」を開催しました。大きなスクリーンに山下清の放浪の旅をイメージした映像が映し出された空間は、センサーで人や物の動きを感知すると映像が動く仕組みを学生がプログラミング。その中で来場者は思い思いに絵を描きながら山下清の世界観を体感。多くの子どもたちを楽しませることができました。
ちぎり絵としおり作りは期間中7回開催。山下清が得意としたちぎり絵を来場者に体験してもらい、最終的に一枚の大きな絵を完成させました。また、しおり作りは会場で見た作品を絵に描き、しおりにして思い出に残してもらおうと企画されました。夏休みの子どもたちはもちろん、一緒に参加してくれた保護者の方や、繰り返し参加してくれた市民の方など、さまざまな世代が楽しめるイベントとなり、地域に展覧会を広めようと取り組んできた学生たちは大きな手ごたえをつかみました。
また、今回の一連の取り組みを記録、編集したドキュメンタリー映像が、同じく政策情報学部の学生たちによって制作されました。

  • ライブペイント×インタラクション
  • ちぎり絵・しおり作成
  • ちぎり絵完成品

次の展覧会に向けて始動

各企画の立案と準備、実施までをやってみる。そして、分かったこと、反省点は次の学びへと活かされます。
11月21日から市川市文学ミュージアムでは、市川市・葛飾区文化交流事業「山田洋次×井上ひさし展」が開催されます。この展覧会でもイベント企画や広報活動に取り組むことになりました。新たなメンバーも迎え、より多くの来場者を呼び込めるようなアイデア、それを実現するためのスキルに磨きをかけて、展覧会を盛り上げていきます。

活動メンバー

学生の声

藤代 玲さん

自分のやりたいこと、新しいことに挑戦できると思い、この活動に参加しました。絵を学んでいる私が、プログラミングやデジタル映像を学ぶもう一人の学生とコラボレーションして実施した「ライブペイント×インタラクション」は、山下清が放浪で旅した世界をデジタル技術で表現し、その空間で絵を描く体験型のイベントです。
企画のプレゼンからイベント当日までの活動の流れを経験する中で、一番難しかったのは「伝えること」。たくさんの人と協力したイベントだったので、自分がイメージしたことを分かりやすく伝えることが本当に重要でした。イベントに参加した子どもたちの反応を見るのは楽しく、そこから学ぶことがたくさんありました。

政策情報学部 藤代 玲(銚子高校出身)

倉田まいさん

子どもたちに絵を描く楽しさを体感してもらいたいという思いから、しおり作りを企画しました。会場で見た作品をモチーフに絵を描き、しおりにして持ち帰れば夏休みの思い出になると考えました。私は絵を学んでいますが、この企画を通じて、自分たちが大学でどんなことをしているのか、政策情報学部ならではの創作力も地域の方々に伝えたいという思いもありました。
企画作りからやってみる経験をして、これまで見てきた先輩たちの苦労や達成感を自分も味わうことができました。

政策情報学部 倉田まい(南葛飾高校出身)

山端寧さん

山下清の作品を知ってもらい、興味を持ってもらうために、山下清が数多くの作品を残した「花火」を題材に、来場者と一緒にちぎり絵の作品を完成させることを企画しました。実施までに何度も案を練り直し、具体化するのは大変でしたが、その中で計画性の大切さを実感しました。
ちぎり絵は2ヶ月にわたり複数回開催しましたが、イベントの実施者として責任感を持つことはもちろん、体調管理も重要だと感じました。会場では、子どもから大人までさまざまな年代の方々と交流できたことが楽しかったです。

政策情報学部 山端 寧(白井高校出身)

笠嶋倖介さん

私はドキュメンタリー映像の制作を担当しました。企画の段階から本番までを撮り続ける中で、いろいろな人と知り合えたことが楽しかった反面、企画ごとのスケジュールの把握や連絡のやり取りには苦労しました。イベントの規模が大きくなるほど、自分が担当することだけでなく、各企画との連携と協力が大切だと分かりました。
撮影に役立った授業は映像基礎です。カメラの扱い方を学んだことが、ドキュメンタリー映像を撮ろうと思ったきっかけになりました。

政策情報学部 笠嶋倖介(柏井高校出身)

担当教員の声

大学の外で仕事をする経験を通じて、社会では自分のやりたいことだけをできるわけではない、ということを理解してもらうことが、この活動をやってみる狙いの1つです。ミュージアムの方々とのやり取りの中で、自分のやりたいことと相手のニーズのすり合わせ方、情報の整理・共有のための対話やコミュニケーションを学び、また、相手の期待に応えるという責任感も生まれました。
作品づくりに関してはメディア情報系の学生たちが活躍を見せる一方、政策系の学生たちは裏方となり、企画間の連携やミュージアムとの対応を積極的に行っていたことが印象的でした。作品づくりと、その作品を世の中に発信していくために必要な仕事、政策情報学部の学びがしっかり活かされていたことが嬉しかったです。

政策情報学部 准教授 権 永詞

権 永詞 准教授

市川市文学ミュージアム館長の声

文学ミュージアムの初めての試みとして、政策情報学部の学生の皆さんに「山下清とその仲間たちの作品展」の関連イベント(CM含む)の企画、運営をしていただきました。山下清の仲間たちを漫画で紹介するリーフレットや来館者参加型のしおり作りやちぎり絵作品の制作、また、山下清が放浪で感じた世界をライブペイントとインタラクションで表現するなど、どれも魅力的で、若者ならではの感性にあふれるものでした。来館者の方にも好評をいただき、お願いして良かったと思っています。ご協力ありがとうございました。

市川市文学ミュージアム 館長 木暮和代さん

木暮和代さん

市川市文学ミュージアムとは

多くの文人墨客に愛され、文化と芸術の土壌が豊かに育まれてきた市川市が、文学と映像を主軸に、同市ゆかりの文学者、映像作家、写真家など幅広いジャンルの作家の資料を収集、調査研究、展示することを目的に、2013年7月にオープンしたミュージアム。展示室のほか、コンサートや演劇にも利用できるグリーンスタジオやベルホールにおいても、文化芸術に関する事業を行っている。
政策情報学部では、2014年度にも同ミュージアムの企画展「神作光一のひもとく和歌の世界」(市制施行80周年記念事業)のプロモーション活動として、学生がクイズラリーを企画、実施し好評を得た。また、その活動で市川市から感謝状が贈呈されている。