2015.11.12 UP

自然エネルギー100%のエコキャンパスをめざす

政策情報学部 省エネ・創エネプロジェクト

千葉商科大学は千葉県野田市に持つ約46,781m2の敷地に「千葉商科大学メガソーラー野田発電所」を建設。2014年4月から稼働し、売電事業を行っています。
2014年度における発電実績は336万kWhで、これが同年度の学内電力消費量の77%に相当することが分かりました。不足する23%をキャンパス内の省エネルギーと創エネルギーで賄うことができれば、自然エネルギー100%のエコキャンパスを実現することができる! 政策情報学部では、その大きな目標に向かい、学内に省エネ・創エネのアイデアを提案し、その意識を醸成するための取り組みが行われています。

大学が使う電力を大学でつくれるか?

東日本大震災以降、日本ではエネルギーに対する意識が変わりました。太陽光、風力、水力など再生可能な自然エネルギーへの期待が高まり、エネルギー政策は転換を求められています。
このような社会の変化の中、日本の大学単体では初となる大規模な野田発電所は、稼働時に予測された年間発電量が約280万kWh。これは一般家庭777世帯分に相当すると見込まれました。自然エネルギーが注目される今、大学の施設でつくられた電力が学内で消費する電力と同量になれば、数字の上では使用電力量を地産地消する日本初の大学になることも不可能ではありません。
「持続可能な社会の実現」を研究テーマとする政策情報学部 鮎川ゆりか教授のゼミナールは、2014年度から自然エネルギー100%のエコキャンパスを実現する可能性を探っています。

  • 野田発電所
  • 野田発電所

創エネ+省エネで100%自然エネルギーキャンパスへ

2014年度は野田発電所の予測発電量に、1号館屋上に設置された太陽光パネルの発電量を加えたものを総発電量とみなし、計算から学内の消費電力量の約63%に当たることを導いた鮎川ゼミの学生たち。そこで、創エネ視点から、キャンパス内の建物の屋根や壁に太陽光パネルを設置したら、どこまで消費電力量100%に近づけることができるかを計算し、数字上の想定ながら89%まで達成が見込めると分かりました。
「残りの11%は省エネで賄い、100%を実現するための具体的なアイデアを考える」。それを翌年度のゼミの課題につなげました。実際には、2014年度の発電量と消費量の実測値に基づく計算を行い、23%の不足分を賄う省エネのアイデアを発表することを2015年度の目標としています。

  • 野田発電所見学
  • 学内調査

地道な調査で無駄の発見、省エネの具体策を考える

電子機器を使わない時は電源をオフにする、冷暖房は適正温度に設定するなど、省エネは身近なところからできる活動ですが、大学をはじめ一定規模のコミュティでエネルギーをコントロールしていくためには、専門的な調査の上で設備の導入なども必要になってきます。このため、千葉商科大学では野田発電所の発電量と学内の消費量を差し引き0にするネット・ゼロ・エネルギー・キャンパス化を検討すべく、「省エネ・創エネプロジェクト」を立ち上げました。外部専門機関の協力のもと、学内で作られた電力を学内で消費するエネルギーシステムの構築を進めるための事業化可能性調査を行っています。
鮎川ゼミを中心とする学生たちは、このプロジェクトにおいてキャンパス内の全建物でエネルギーの無駄を調査。特殊な機器を使用して建物の温度、湿度を測定し「暑すぎ」「寒すぎ」を感じるかどうか、また、エネルギー効率を悪くするようなドアや窓がきちんと閉まらないところがあるか、使用されていない教室の照明や冷暖房のつけっぱなしはないかなど、省エネの余地を隈なく探していきました。
さらには、在学生を対象とした省エネ意識に関するアンケート、ゼミ内で検討した省エネのアイデアに対して意見交換を行う少人数制のグループ討議(フォーカスグループ)を経て、調査結果の分析と考察、そして、目標とする23%削減の方法を考え、発表するための作業が続けられています。

  • 学内調査
  • 学内調査
  • 調査結果の発表

活動成果の発表、全学的な取り組みへの発展に期待

今年度の活動成果は、12月に開催される日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2015」で発表します。来場者の関心を集めるためには、成果を印刷物にしたり、ポスターを作ったり、会場のレイアウトを考えながら、効果的な見せ場を作ることも重要です。そのため、同じ政策情報学部のメディア情報系ゼミナールに協力を依頼し、よりよい見せ方にも工夫を凝らしていきます。多くの方々にこの取り組みを知ってもらい、学内から地域へと広げていくことも、このプロジェクトの狙いの1つ。きちんと説明するための練習も欠かせません。
「自分の目で確かめてみると省エネの可能性はある」と話すのは鮎川ゼミの石橋拓也さん。100%自然エネルギーのエコキャンパス化を実現するために、自分たちが考えた省エネ策を大学に提案すべく研究に力を入れています。

鮎川ゼミ

学生の声

工藤康樹さん

普段の生活の中で見逃していた些細なことも、大きな共同体を意識して考えれば改善する意義があります。この活動を通じて、大学という共同体の一員である以上、大学をより良いものにしていく義務が自分にもあると感じています。
成功すれば日本初の100%自然エネルギーキャンパスとして国内外から注目が集まるプロジェクト。自分が関わった活動で大学が変わる、それを在学中に見たいと思っています。

政策情報学部 工藤康樹(富里高校出身)

布施賢太郎さん

学内の電気設備を調査したことで、エネルギーに対する興味が深まり、節電をより意識するようになりました。
フォーカスグループでは、環境をテーマとする私たちのゼミ以外にも、節電を意識する在学生が意外に多いことが分かったので、学生一人ひとりができる省エネ活動をより具体的にしていくことが、これからの課題だと考えています。
私たちの活動で、省エネ・創エネに興味を持つ人が増えたら嬉しいです。

政策情報学部 布施賢太郎(茂原樟陽高校出身)

林 弘朗さん

企業と連携したプロジェクトなので、遊び半分に取り組むことはできないし、また、しっかりとした結果を残さなくてはならないプレッシャーも感じていますが、このような経験はとても貴重で、社会に出ても必ず役立つと思っています。
学内における省エネのアイデアをまとめる際には、ゼミ内で意見が対立することもありました。意見は早いうちに出し合って議論をすることが大切だと分かりました。

政策情報学部 林 弘朗(東京学館高校出身)

担当教員の声

温度分布が一目瞭然に分かる特殊な機器を用いた調査で、エネルギーの無駄が目に見えた体験や、窓のあけっぱなしや照明のつけっぱなしなどは、自分たちが意識すればできることがたくさんあると発見したことなど、この活動を通じて、キャンパスに限らず日常生活の様々な場面にも省エネ・創エネの余地がまだあることを理解できたと思います。
しかし、プロジェクトで大事なことは「きちんと結果を出す」ことです。1つ1つちゃんとやることを徹底して、取り組みの成果をエコプロダクツ展2015で発表できる形にすること。さらには、自らアイデアを出し、学内全体にこの活動を広めていけるようになってほしいです。

政策情報学部 教授 鮎川ゆりか

鮎川ゆりか 教授

省エネ・創エネプロジェクトとは

省エネ・創エネを専門とする外部機関(サステナジー株式会社、テクノプランニング社、紫波グリーンエネルギー株式会社)の調査協力のもと、本学におけるネット・ゼロ・エネルギー・キャンパス化の可能性を探るプロジェクト。平成26年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金(構想普及支援事業)に採択された。省エネ先進地の視察や学内調査の結果から、本学独自のエネルギーマネジメントの取り組みが可能かどうかを検証する。