2016.07.29 UP

ソーシャルビジネスを学ぶ

人間社会学部

地域や社会では、環境問題、格差・貧困、高齢者・障がい者の介護・福祉から、少子化、地域コミュニティの衰退等に至るまで、多種多様な課題が顕在化しています。従来、行政の介入やボランティアの支援によって解決が図られてきましたが、人々の価値観やライフスタイルの多様化により複雑性を増し、行政やボランティアだけで対応することは難しいのが現状です。
そこで、社会のニーズを市場と捉え、住民、NPO、企業など、様々な主体が協力しながら課題解決のための取り組みを持続的な事業として行うソーシャルビジネスに期待が寄せられています。

ソーシャルビジネスとは何か?

身近な社会的課題の解決を目的としたビジネスがあることを知っていますか。
例えば、働きながら子育てをする家庭の場合、子どもが病気をした時に保育園では預かってもらえません。結果、働く親は仕事を休まざるを得ず、子育てと仕事の両立を阻む大きな壁となっています。この問題の解決に立ち上がったのが、有資格者や子育て経験者をスタッフとする脱施設型(自宅預かり保育)のサービスを提供するNPO法人です。このサービスに対する関心は高く、働く親の子育て問題を解決する取り組みとして、少しずつ広がりを見せ、さらに安定したビジネスモデルを確立させたことでも注目が集まっています。
このように、ビジネスを社会的課題解決のための手段として、サービスや商品(=解決策)によって社会に新しい価値を生み出し、社会に貢献する取り組みをソーシャルビジネスと言います。企業や団体でも、発展途上国の貧困問題や人種差別などの社会問題をソーシャルビジネスで解決する活動が増えるなか、この分野の将来を担う人材を育成するのが人間社会学部です。

  • 子どもと関わる
  • 介護を学ぶ

冊子制作を通してソーシャルビジネスを学ぶ1年生

人間社会学部は、さまざまな社会的課題の中でも、地域社会における課題をビジネスの力で解決することを重視した教育を行っています。2年次以降は、「社会」「福祉」「家族」の3分野で専門性を高めていきますが、ソーシャルビジネスで活躍するための学びは、入学直後からスタートします。
特長的なものは、1年生全員で取り組む冊子の制作です。入学から間もなく開始するこのプロジェクトは、ソーシャルビジネスを展開する企業、団体を取材し、それぞれが取り組む社会の課題と解決法を学ぶことで、ソーシャルビジネスの重要性を理解するとともに、その後の学修とキャリア形成を考える機会としています。取材の内容を冊子にまとめ、ソーシャルビジネスを分かりやすく紹介することで、その活動の認知度を高めることも目標としています。

  • 取材
  • 原稿作成

さまざまな分野の課題発見と解決のアイデアを考え、実践するステージへ

冊子制作を通じて、社会に関心を持つことの大切さを知り、課題解決の意欲を高めた学生たちは、自ら課題を発見し、解決のアイデアを考える段階へと進みます。福祉施設と地域が合同で開催する夏祭りの運営から地域と高齢者の関わり方に新たなアイデアを考えたり、各地で行うフィールドワークからまちおこしのプランを提案したり、被災地の商品を使ったメニューを考案して学食で販売するなど、地域の解決するべき課題に取り組むさまざまなアクティブ・ラーニングに、多くの学生が参加しています。

2015年の夏には、青森県弘前市の活性化をテーマに、観光でまちを賑わすプラン作りに取り組みました。地元の名所や名産品を取り入れた結婚式で観光集客を狙ったプランは、大学生観光まちづくりコンテストで第2位に相当する青森県知事賞を受賞。2016年はこのプランの具体化に向けた現地調査を行います。学生たちが自分の足でまちを歩き、探した観光資源を最大限に活用したプランは、弘前市が課題とする活性化の解決策となるのか、期待が膨らみます。

  • 福祉施設との交流
  • フィールドワーク
  • 復興支援丼の販売
  • プラン作り
  • プラン資料

ソーシャルビジネスで活躍する人材をめざして

社会に出なければ、課題も解決策も見出すことはできません。社会の現場で活動する豊富なアクティブ・ラーニングの機会により、人間社会学部の学生たちは、課題の発見力と解決力を養います。また、その課題に関わる人々との交流は、課題をより深く理解し、コミュニケーションのスキルも向上させています。
社会のためのビジネスが、人々の心を豊かにし、経済の活性化や雇用も生み出すことができる。学生たちはその意識を持ち、ソーシャルビジネスを創出する人材へと成長を続けていきます。

学生の声

菅さん

社会にどのような問題があるのかを広く知ることで、普段の生活の中にも解決の糸口が見えてきます。
私は、地方の過疎化や地域商店街の衰退といった課題に関心を持ち、今年度は、北陸の産業や観光資源の活性化をテーマとするフィールドワークから、まちづくりのプランに取り組みます。コンテストの入賞をめざしつつ、ローカルコミュニティビジネスをテーマに、地域性を取り入れたビジネスについて学ぶことが目標です。

人間社会学部 菅 恵祐(霞ヶ浦高校出身)

普久原さん

社会の現場に出ると、それまでのイメージがいい意味で崩れ、問題の本質や解決のヒントを得ることができると思います。
7月に開催した「真間あんどん祭り」では、地元の小学生と保護者をはじめ、商店街と協力して、夏のイベントを作り上げることができました。参加型のプログラムを取り入れたことで、地域の人々が交流する機会となり、コミュニティの縮小という課題の解決に貢献できたと感じています。8月には、子どもたちがお金の知識を学ぶ体験型の講座のサポートを行います。企業の社会貢献の取り組みを学び、今後に活かします。

人間社会学部 普久原香奈(若松高校出身)

担当教員の声

社会の課題を解決する取り組みの1つにソーシャルビジネスがあります。ソーシャルビジネスを学ぶ上で大切なことは、さまざまな課題を抱える社会の現状を知り、その原因を考えること。興味や関心を持つ分野の現場を見て、体験することで、課題を解決しつつ利益を得て継続的に事業を行う工夫を知り、自ら課題解決の提案ができるようになってほしいです。
社会での活動は、課題を身近に感じるだけでなく、自分事として捉え、そのために何ができるかを考える機会となります。その経験を重ねた学生ほど、自ら考え行動しているのが見えてきます。学生たちの意識の変化や成長を嬉しく思っています。

人間社会学部 専任講師 齊藤紀子

齊藤紀子 専任講師