第17回ユニバーシティ・レクチャー「ブロックチェーンとエネルギービジネス」開催報告

お知らせ

2019年2月15日

第17回ユニバーシティ・レクチャーは、2019年2月8日(金)、丸の内サテライトキャンパスにおいて、株式会社RAUL代表取締役社長で一般社団法人エネルギー情報センター理事の江田健二氏を講師にお招きして「ブロックチェーンとエネルギービジネス」のテーマにより開催しました。

今回は、経済研究所の「安全で公平な金融システムの実現に資するFinTechフレームワークの提案」研究プロジェクトと学長プロジェクト4「環境・エネルギー(Sustainability)」の両プロジェクト共催によるもので、原科学長をはじめとした研究活動を推進する教員・学生のほか、本テーマに関心をお寄せ頂いた一般社会人など約40名の方々にご参加いただきました。業界の第一人者でもある江田氏の著書『世界の51事例から予見するブロックチェーン×エネルギービジネス』は、Amazonベストセラー第一位にもランキングされており、著書のエッセンスが盛り込まれたお話は、近未来の経済活動の有り様を垣間見る講演となりました。

江田氏は、先ず、「トークンエコノミー」(仮想通貨により形成される経済)が将来的にビジネスの主流になるとの予測から次の4つのキーワードを解説。それらが近い将来に繰り広げるであろうエネルギービジネスへの可能性に言及されました。概要は次の通り。

  • 「ブロックチェーン」が広げるビジネスチャンス
    例えば外国に送金する際、これまでは銀行などを仲介して相手に届くまでに数日を要していたことが、仮想通貨では第三者を必要とせず、当事者だけで僅かの時間で素早くできる。「ブロックチェーン」が信用力と仲介業務を金融機関等に代わって代行できることにより、直接取引が可能になることで新たなビジネスチャンスが生まれる。反面、これまで信用力を強みにしていた様々な仲介ビジネスを崩壊へと導くこととなる。
  • 「スマートコントラスト」(自動化)による効率化
    人がいないと進めることが困難であった業務が自動化(スマートコントラスト)され格段の効率化が図られることでコストダウンに繋がる。更に改ざんが困難なデジタル情報を作成でき、記録されている情報が正しい情報であると誰でもが認識できることで、離れた場所にいる個人同士が安心して直接取引ができ、新たな情報価値を生み出せることとなる。
  • 「ICO(アイシーオー)」(イニシャルコインオファリング)による新しい資金調達
    独自の仮想通貨発行で調達したお金を事業資金に利用することで、迅速な資金調達が可能となる。また、仮想通貨が値上がりした場合には、他の投資家に売却して利益を確保できる。
  • 「マイニング」の可能性
    ブロックチェーンに記録される取引情報の承認を行う必須の業務で、コンピュータがプログラムに基づいて自動的に実施する。マイニングに参加したコンピュータ(保有者)は、一定のルールに沿って報酬をもらえる仕組み。世界各国で数百万台のマシーンが稼働しており、日本では2018年8月から、熊本電力(新電力)がマイニングに参入するなど、マイニングファームを検討する動きが活発化している。

また、電力業界特有の3つの壁(規制・ルールの壁、自己矛盾の壁、心の壁)を乗り越えることを前提に、今後ブロックチェーンがエネルギービジネスに浸透していくステップを次のように予測されました。

  1. ファーストステップ(2020年~2025年)
    ビットコインなど仮想通貨の活用・スマートメーターなどの機器の効率化・ブロックチェーンの活用に関する基礎研究の段階
  2. セカンドステップ(2015年~2030年)
    電気自動車(EV)との連携・蓄電器、家電製品などI0T機器との連携・エネルギー企業同士での直接取引の段階
  3. サードステップ(2030年~)
    再生可能エネルギー普及に向けた取り組み・電力の個人間(Peer to Peer)取引・消費者とエネルギー市場の直接取引の段階

江田氏は、既存の技術を「新幹線」、ブロックチェーンを「飛行機」の移動手段に例えて、ブロックチェーン「飛行機」を活用することで、違う世界が見えて来ることにより、これまではできなかったビジネス(新たな価値)が創造できること。要は「実現できていないことの実現に、ブロックチェーンが活用できないか?」という視点が大切であることを強調されました。

これまでは、エネルギー生産者である電気会社やガス会社等による一方向であった消費者との関係性が、サードステップとなる2030年以降は、生産消費者が主役となることによって広がるエネルギービジネスのさまざまな可能性を語られ、最後は「一緒に未来を創っていきましょう!」と結ばれました。

公開シンポジウム

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