オリンピック復興運動に関する社会文化史的考察

研究課題

「オリンピック復興運動に関する社会文化史的考察」

研究目的

2020年に東京オリンピックが開催されることが決定されてから、高等教育機関においては、オリンピックに関する研究に取り組み、オリンピックの歴史や意義について広く社会に伝えることが期待されている。本プロジェクトは、この要請に正面から取り組み、プロジェクト進行中には、共同研究の成果を、定期的に公開セミナーを開くことによって、本学学生、教職員、市民に示していく予定である。本学のオリンピック研究・オリンピック教育の目玉としても宣伝できるものと考える。
内容上の研究目的は以下に記す通りである。

近代オリンピックの研究は、長らくクーベルタンの思想の研究、あるいはオリンピック普及運動に重要な足跡を残した人物の哲学を巡る研究に特化されてきた。また、東京オリンピックの開催が決まってからは、児童に対するオリンピック教育およびオリンピックの経済効果の研究にほとんどの研究が振り向けられており、もはやオリンピック復興運動について新たな視角から再検討を試みようとする動きは今なお見られない。2016年末に出版された『学問としてのオリンピック』(山川出版社)においても、これまでの欧米におけるオリンピック研究を問い直すような論考はほとんどなく、新たな視角が提示されることはなかった。本プロジェクトにおいては、これまでの欧米における研究の蓄積を受容しつつ、当事国であることによって、相対的な評価が加えられてこなかったイギリスとギリシアにおけるオリンピック復興運動について再検討をおこない、これらの復興運動がクーベルタンの主導による近代オリンピックの開催までの道をどのように切り開いていったかを明らかにする。オリンピック開催に際して生じた民族、性差、階級による排除の問題、アマチュアリズムを巡る問題は、それぞれが複雑に絡み合いながら、すでに19世紀のオリンピック復興運動の中で繰り返し議論がなされてきていた。これらの議論がどのような社会背景で起こり、どのような論争を生み出し、向かうべき方向が形成されてきたかについて、共同研究を通じて明らかにしていく。

1年目は各人が個別研究を進めつつ、セミナーで報告し議論することで、知識を共有していく。年度末の海外調査を踏まえて、2年目は、各人の個別研究とともに後述の小テーマの共同研究を進め、研究期間終了後に『国府台経済研究』に論文を寄稿するだけではなく、書籍出版を目指す。

【小テーマの研究】

  • 古代地中海世界におけるオリンピックの位置づけに関する通時的・時代横断的な研究(師尾・藤野)
  • ウェンロック・オリンピックの再検討(大賀・沖塩・師尾)
  • スポーツとジェンダー:男らしさとスポーツ(大賀・沖塩・荒川)
  • ギリシア人エリートのオリンピック復興運動とドイツ人国王(荒川・師尾)
  • オリンピックとナショナリズム:20世紀の変容(藤野・朱・荒川)
  • 全体主義・社会主義のオリンピック(藤野・朱)
  • オリンピックと排除の論理(大賀・沖塩・荒川・師尾・藤野・朱)

研究員

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