RSS中小企業支援研究創刊号
22/60

Topicsトピックス今の経営者は 何をなすべきか株式会社東京商工リサーチ代表取締役社長菊池 昭一20中小企業支援研究日本の中小企業は全企業数の99%強、労働者数で70%弱を占める。中小企業は大企業を支え、地域社会の雇用を生み出し、わが国の経済を支える存在として社会貢献している。国や地域の繁栄や発展には中堅・中小企業が健全で、その持てる活力が発揮されなくてはならないことは言うまでもない。しかし、中小企業は経営体質、経営基盤ともに脆弱で、抱えている経営課題も一朝一夕には解決しないものが多々あり、体質改善は容易ではないのが実情だ。アベノミクス効果で国内景気が改善傾向を見せ、大企業は輸出関連を中心に空前の高収益を享受している。しかし、中小企業への波及効果は乏しく、規模による収益格差は拡大し、景気拡大の恩恵に浴する企業は二極分化している。それだけに中小企業の多くは自らの企業努力で元気を創出しなければならず、いわば「自己責任の時代」に放り出されているに等しい。この背景には域内経済活動が主体で需要が縮小し、競合企業が多いことがある。さらに、円安に伴う原材料費の高騰がコストアップを招き、それを価格転嫁できずに収益が圧迫されやすい中小企業特有の構造的な弱さも指摘される。中小企業の多くは、売上が伸びない、資金繰りが苦しい、人材不足、などの潜在的な経営課題を抱えている。国は2013年3月末の中小企業金融円滑化法(以下、金融円滑化法)の終了期限に合わせ、総合的な中小企業対策を推し進めてきた。中小企業金融モニタリングに係る副大臣会議を設置し、動向把握と総合的な体制整備に注力してきたことは中小企業にとり心強いことだ。金融庁による金融機関への強力な資金支援要請や、政府系金融機関や信用保証協会による支援促進策で金融円滑化法の終了後もそれまでと同等以上の支援体制を維持している。2013年3月、企業再生支援機構を地域経済活性化支援機構に改組すると同時に、機能を拡充した。また、各都道府県にある中小企業再生支援協議会を通した事業再生の支援や、中小企業支援ネットワークでの経営相談、各地の事業再生ファンドへの出資など、中小企業の経営改善を支援する体制を整えた。あらゆる側面から中小企業の支援を前面に打ち出すが、金融円滑化法を活用して貸付条件を変更しながら事業再生が難しい企業は5~6万社とも言われ、企業の経営破たんは先延ばしされている。金融庁は事業再生や事業継続が危ぶまれている企業に対し、金融機関による債務整理などを前提にした適切な助言や自主廃業を選択する企業に、円滑な処理等への支援協力を促している。倒産を回避して休業・廃業する事業者は判明分だけで年間2万5000社を超えている。この他、民間主導で後継者難や再生意欲が減退している企業を対象にM&A(企業の買収・合併)も活発化し、事業存続のケースが見られるようになってきたことは喜ばしいことだ。幾多の経営課題を等しく共有している中小企業は約420万社を数える。国を挙げての諸施策をすべての企業に行き渡らせ、手厚く支援することは難しく、これらの施策が奏功するには地域に根差した金融機

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です