RSS中小企業支援研究創刊号
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中小企業は、雇用でも生産でも価値の創造という意味でも日本の経済構造の中で重要な役割を果たしており、とりわけ雇用については日本の勤労者の大半に雇用機会を提供している存在です。また、未来先取りの技術開発やビジネスモデルを進める先兵も中小企業であり、ベンチャー企業はそもそも中小からスタートするという意味で、中小企業は日本経済の革新を進めるエネルギー源でもあります。日本はとりわけ中小企業が見事に集積した産業構造を持っており、大企業が高い生産性を上げられるのも、元はと言えば中小企業の生産性向上努力が何層にも重なって結果として大企業を助け、日本経済の生産性向上を実現し、高度成長を可能にしたと言えます。最近、こうした中小企業の存在と役割に世界的な関心が集まっています。世界では、中小企業をSME(Small and Medium Enterprises)と言い、各国はその育成に取り組み始めています。中国も韓国も欧米諸国も、日本のような中小企業の蓄積がありません。台湾は中小企業が数多くありますが、それらをとりまとめる大企業がありません。多くの中小企業の集積の上に大企業が活躍をするという整然たる産業構造を持っているのは世界では日本だけと言えます。それだけに近年、日本の中小企業に改めて世界的な関心が寄せられているのです。千葉商科大学は85年の歴史があり、実学の府として努力して来ましたが、とりわけ中堅・中小企業との連携に強みがあります。千葉商科大学では中小企業研究と教育が盛んであり、また最近では中小企業診断士の養成、中堅中小企業基幹人材育成講座や市川市や江戸川区の中小企業との様々な連携活動など、活発な取り組みを進めて来ています。わけても、本学の経済研究所では2年前に中小企業研究・支援機構を設立し、積極的に中小企業を幅広く研究し、また中小企業の発展を支援し、国際的にも発信していこうという努力を精力的に進めていることは大いに評価出来ることと思います。本学では、大学を巡る環境条件が年々厳しくなる中で、将来に向けてより良い教育と研究が出来る大学を構築すべく、一連の大改革に取り組んでいます。これまで本学は伝統のある「商経学部」、グローバル化をふまえた「政策情報学部」、サービス化をとらえた「サービス創造学部」の3学部構成でしたが、この春には、傷つきやすい社会を“優しさのプロ”として救える人材を養成する「人間社会学部」を開設し、来年には「国際教養学部(仮称)」を創設する予定です。さらに理事会は昨年末に大きな「商経学部」を二つの学部に分けることを決定しました。そこでは、商学を中心とした学部と経済・経営を中心とした学部が想定されていますが、特に経済・経営を中心とした学部の強みは、中小企業と地域にかかわる研究と教育とアクティブラーニングにあります。経済研究所の中小企業研究・支援機構は、そうした大学自体の構造改革をしっかり見据えて、その持てる力をフルに発揮して戴けるものと期待しています。中小企業研究のすすめ千葉商科大学 学長島田 晴雄1中小企業支援研究 Vol.1

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