RSS中小企業支援研究創刊号
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34中小企業支援研究学術論文1 平成25年12月中小企業庁発表の中小企業・小規模事業者の合計は385万社で、企業全体に占める割合は99.7%である。平成21年と比較して32万社の減少となっている。2 この経営革新等支援機関の活用では、事業計画を作成に対して、補助金を付ける等インセンティブが設定されている。方法論の是非は別として、事業計画(経営改善計画を含む)の作成は企業等にとって有効な経営ツールであり、また、金融機関等との情報の非対称性を解消するツールといえ、有効な取組みと考える。『朝日新聞』(平成25年5月9日付)に掲載された「けいざい真話」では、税理士たちが円滑化法終了後の中小企業等の「延命」ともいえるこの構想の問題を指摘している。3 同時に、企業の再起に向けた助言、経営者の生活再建への支援を求めている。~経営革新等支援機関に対する期待とその課題~中小企業の経営改善は進むかわが国において、中小企業並びに個人事業者(以下、中小企業等)の全企業数に占める割合は97%である1。しかし、資本金1億円未満の欠損企業数の割合は、平成20年度以降7割を超えるなど、中小企業等の経営改善は重要な課題である。このような状況下、平成24年6月に中小企業経営力強化支援法が施行された。同法に基づいて、中小企業等に対して専門性の高い支援を行う経営革新等支援機関の認定制度が平成24年8月に創設され(平成25年7月10日現在で13,459機関)た。さらに、平成25年3月には、全都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会内に『経営改善センター』が新設され、自ら経営改善計画を策定することが難しい中小企業等を対象とした経営改善計画の策定支援を経営革新等支援機関が行い、経営改善の実行を促進する制度が導入された。中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法と略称)に基づく条件変更等(返済猶予)の申込みは、9割を超える水準で推移するなどその多くが受入れられ、倒産を抑止し雇用を維持する効果があった。一方で、貸付条件の再変更等が増加(実行された中小企業等の8割といわれる)し、加えて貸付条件の変更等を受けながら経営改善計画を策定していない中小企業等も少なくない現状がある。円滑化法に基づく貸付条件変更後の倒産は、平成24年度は250件と前年比67%増(東京商工リサーチ調べ)となっており、中小企業等では経営改善が進んでいないことを示しており、その倒産による地域経済への負の影響が懸念される。中小企業等にとって経営改善は有効であり、経営革新等支援機関による取組みは期待されるが、その実績の報告は少ない。その理由には中小企業等が置かれた状況と支援制度の設計等にミスマッチがあるのではないかと考える。本論文では、中小企業等が持つ特性と中小企業等に対する経営改善に関する制度等の整備状況をまとめるとともに、経営力強化支援法に基づき認定された経営革新等支援機関2が抱える問題を明らかにするとともに、その解決策を提示する。2.円滑化法終了後の現状リーマンショック後、資金繰りを中心とする中小企業支援が実施され、際立った支援策が円滑化法であった。しかし、厳しい経済環境から未だ抜け出すことができない中小企業等は少なくない。特に金融機関に借入金返済条件の変更等を申し出た多くの中小企業等について、円滑化法終了後には再度の条件変更契約を取下げさせられる企業が続出する懸念がある。中小企業等の返済猶予申請は30-40万社超、そのうちの5万社に倒産の懸念があるとされる。一方で、平成24年度に改定された中小・地域金融機関向け監督指針では、事業の持続可能性が見込まれない顧客企業に対する支援として「円滑な廃業3」への支援が提示され、中小企業等に関する金融機関の姿勢の変化も予想される。(1)中小企業の特性①中小企業特性中小企業等の経営改善を検討するにあたり、財務面から中小企業等の特性を整理する。小藤は、中小企業等の特性について「中小企業は大企業と違った経営上の特性を持っている。例えば、中小企業の法人は経営者個人の資産と分離されにくい性質を持っている。そのため、単純に会社の財務内容を見るだ1.はじめに村山 賢誌2014年2月1日掲載承認

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