RSS中小企業支援研究創刊号
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38中小企業支援研究学術論文9 中小企業応援センター事業では、受託機関中金融機関は13行(さらに、7行が信用金庫)であった。10 これらの事業では、受託機関は運営費や外部専門家の派遣費用などが補助され、金融機関では自社の取引先への支援、新規取引の開始のツールとして一定のインセンティブがあった。11 本論文では、リレバンの定義について金融審議会金融分科会第二部会の報告に従う。また、リレバンに関する先行研究は多いが、齊藤(2012)は金融審議会金融分科会第二部会の報告、座長メモ並びに内田浩志の論文等を取り上げリレバンについて整理されており、その整理を参考にした。12 齊藤(2012)は、その効果はあまりなかったとしている。確かに金融機関において担当する部署の人員削減等が行われ、地域金融機関による支援は停滞した。13 星(2011)は、監督緩和が不良債権の増加をもたらしたと指摘する。一時的には倒産等を抑制したが、債務者区分において、条件等変更先であっても区分を下げなくて良いとしたことから、隠れた不良債権が増加していることを問題としている。千葉商科大学で行われた公開シンポジュウム(2013年8月1日)において、金融監督官も円滑化法に基づく債権区分の不変更等が不良債権等の不明瞭さをもたらしたことを認めていた活性化にむけて迅速な支援とともに、如何に中小企業等の事業の安定化推進に貢献できるかであろう。また、協議会には設置期限がある。そのため、本来はそのノウハウを公的支援機関や民間に移転・継承することが求められる。(3)金融機関による経営改善の有効性民間金融機関は、協議会が設置される前から取引先である中小企業等の経営改善に取り組んできた。協議会が設置された後には、独自の再生計画作成支援実績も伸びており、平成15年度から同18年まで取組まれたリレーションシップバンキングがプラスに影響したものと考える。さらに、外部の専門家を活用する中小企業応援センター事業9(平成22年度)とその後継事業である中小企業支援ネットワーク強化事業10(平成23年度から同24年度)、さらに中小企業・小規模事業者ビジネス創造等支援事業(平成25年度から)は、金融機関による支援ノウハウの習得と蓄積を進め、支援能力を向上させたと推測する。平成23年の『中小企業白書』では、大阪信用金庫が様々な機関と連携し、中小企業への支援能力を向上させ、さらに、その実効性を高めて中小企業の成長という結果をもたらす仕組みと実績が紹介されている。この事例は、他の金融機関でも応用可能であり、(事例等と)同様の取組みを進めることで、コンサルティング能力を強化することが可能である。特に、この事業では専門家に対する謝金などが補助され、金融機関の負担が軽減される。平成25年度から実施されている地域プラットホーム事業では、国からの協力要請もあり参加する地域金融機関が増えている。このように、金融機関に不足する中小企業等の事業面に対する評価を外部の機関と連携することで補完できること、金融機関として取引先中小企業等の財務状況を認知していることから円滑な資金調達支援を可能とする。このため、金融機関と民間支援機関等が連携した中小企業等に対する支援は有効である。(4)金融監督と金融機関経営改善において、金融調整は重要な位置を占める。そのため、金融機関の支援姿勢を後押しする規制は、経営改善の促進に大きな影響を及ぼす。①リレーションシップバンキング11(以下、リレバンと略称)と金融監督地域金融機関によるリレバンの取組みは、監督指針や金融検査マニュアルに基づく金融機関に対する規制が大きく影響した。平成15年3月の「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」公表後、金融検査マニュアルの改定により検査・監督体制が強化され、地域金融機関は4年間にわたり取組むことになった12。また、円滑化法による条件変更等を実効あるもの13とするために金融検査マニュアルの改正が行われ、条件変更等の受入状況は90%を大きく上回った。②金融機関による支援の限界リレバンの取組みにより金融機関の経営改善能力は向上した。しかし、経営改善策の実行においては、中小企業等にとって役員報酬の削減をはじめとした図表7 中小企業経営改善に関する諸制度とその動き法等の整備検査マニュアル等※11999年中小企業基本法の改正策定2000年民事再生法 2001年私的整理ガイドライン 産業活力の再生および産業活動の革新に関する特別措置法2002年 中小企業版策定2003年産業再生機構リレバン※2中小企業再生支援協議会 2004年金融機能強化法改定2007年事業再生ADR 2008年緊急保証制度改定金融機能強化法 改正 2009年中小企業金融円滑化法改定企業再生支援機構※3 2012年中小企業経営力強化法(経営革新等支援機関)改定2013年改定(注)1:検査マニュアル等では、検査マニュアル、同別冊及び監督指針、それに基づく金融機関の取組みを含む2:リレーションシップバンキング(~2006年)3:平成25年3月に地域経済活性化支援機構に改組された。

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