RSS中小企業支援研究創刊号
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39中小企業支援研究 Vol.114 売上増により相違的に利益を確保することができれば償還等に充てる資金のねん出は比較的容易である。しかし、実際には売上の増加を期待することは難しい。そのため、経費の抑制が確実である。その際、役員や経営者家族に対する給与の支払いなどについては甘い場合がある。その他、過剰な保険契約や交際接待費、地域の様々な会(ロータリークラブやライオンズクラブ等々)への支出が少なくないが、対面上から退会や費用削減への抵抗は少なくない。15 外部からの指摘以前に自ら役員報酬の削減等に取組む経営者も少なくない。しかし、家族の報酬や給与削減となると抵抗も少なくない。特に、資産の処分なるとなおさらである。16 担当者が日常的に良好な関係を構築していない場合には、優越的な地位を用いた指摘と捉えられかねない。『中小企業白書』(2012年p. 168)では、金融機関と中小企業等の意識のミスマッチを指摘している。17 金融機関は、取引姿勢が厳しくなったという風評が広がることを懸念する。18 事業性を考えた場合、本業の儲けを示す営業利益を確保できるか否かがポイントであるが、営業外収益等により純利益やキャッシュフローを確保している場合には、改善の緊急性は低くなる。追加融資等が実施されるとキャッシュフローは改善するため、問題の本質に目が行かないという場合も少なくない。この点は、金融機関の限界の一つと考える。19 平成15年頃から創業において事業計画の作成を支援する取組みが広がり、現在では定着している。具体的には、商工会議所・商工会といった地域に密着した中小企業等支援機関での創業セミナーがあり、保証協会の保証付き融資(創業融資)や中小企業金融公庫(国民生活事業)の創業融資において簡易であるものの事業計画の作成が融資とセットとなっていることなどが挙げられる。また、自己資金に対して、その2倍から3倍の融資が予定されており、事業計画作成のインセンティブとなっている。この点も創業初期から事業計画の作成を定着させた理由と考えられる。ただし、平成15年以前には、事業計画作成に関する支援は少なくなかったこともあり、多くの中小企業等では事業計画は作成されていない。さらに、商工会議所等のセミナーを受講していないままの創業もあり、事業計画をもたない中小企業等も少なくない。20 協議会の統括責任者補佐等がセンター長に就いている場合が少なくない。21 26年2月時点において、数値基準は大幅に緩和されている。22 中小企業等の再生を支援する特定調停制度が26年2月から導入されることになった。23 また、低い支出額に抑えることも可能であるが、その場合、しっかりとした事業分析をはじめとした計画作成の準備のコストを賄うことができず、浅いレベルの内容に限られる場合もある。経費削減、事業所の縮小及び人員削減など痛みを伴うこと14が少なくない。特に経営者にとって痛みは個人的にも受容しがたい15場合もある。改善とはいえ痛みを伴う取組を金融機関の職員が求めることは、取引関係もあり困難な場合が少なくない16。特に、取引先の経営者が地域の有力者の場合には、経営内容への口出しが憚られる17。このため、コンサルティング現場での経営者に対する意識づけには限界がある。一方で、経営状況が悪化した取引先に対する債務者区分を下げることは、引当金等の積み増しが求められるため金融機関に負担が生じる。そのため、金融機関としては改善要求を明確に指摘しないことも少なくない。また、資産超過の場合には、営業損失が連続しても18改善を求めず、運転資金の追加融資が実行されることもある。このため、金融機関の独自の取組みにおいては、経営者の意識を変えるまでに至らず、状況が一層悪化した状況の下での支援になりがちである。これらの点が金融機関の支援の限界といえる(この点が、取引先企業の一層の経営悪化を進め、改善を難しくするという悪循環をもたらす)。これらの点から、金融機関の支援姿勢を積極的にさせるとともに、金融機関が持つ独自支援の限界を補うことが必要であり、経営改善の促進に不可欠な取組みがさらに必要である。円滑化法終了後の中小企業等への経営改善策として、経営力支援強化法に基づく経営革新等支援機関による支援が平成24年に創設された。経営革新等支援機関による経営改善計画作成支援に対する補助金が支給されることが特徴である。この他に、創業における計画作成やものづくり補助金の申請において、関与を前提とした施策も設けられている。経営改善計画の作成では、改善目標を織り込み、設定した取組み実行のモニタリングも含まれているため、経営改善には有効な支援策として期待される。一方で、問題も少なくない。(1)経営改善における支援基準と自己負担の問題経営改善では、経営革新等支援機関が経営改善計画作成とともに金融機関と連携して、計画の実行支援とモニタリングを担う。多くの中小企業等では事業計画は作成されていない19ため、事業不振からの確実な脱却を図るには、しっかりとした事業計画、すなわち経営改善計画の作成と実行が求められるため有効な支援である。経営改善計画は、協議会の下20に設置された経営改善センターの承認を要する。その支援決定においては、協議会の償還年数等の設定に準拠しているため、対象となる中小企業等が限定される21。また、債権カットなど抜本的な支援を金融機関が望まないなど一定の限界がある22。中小企業等の特性で示した通り、厳しい財務状況にある中小企業等の現状に、支援基準が即しているか(設定された年数での償還はできないのではないか)という点に疑問がある。さらに、計画作成に関する補助金が支給されるといっても、自己負担額(100万円を上限とする1/3)を賄うことが可能なのかという点も疑問である23。この他、下記に示すような問題がある。①構成比の問題経営革新等支援機関として多くの民間の専門家4.経営革新等支援機関への期待とその問題

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