RSS中小企業支援研究創刊号
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40中小企業支援研究学術論文が認定されている。図表8は経営革新等支援機関の専門家別の構成比であるが、税理士が圧倒的に多く70%を超えており、必要とされる専門家の知識・経験のバランスに欠けている。また、2(1)②で示した通り、わが国の欠損企業の割合は7割を超えている下で、企業等の多くの税務申告等に税理士の関与が推測されるが、その税理士による経営改善が可能かという疑問を否定できない。この専門家のバランスを欠いた理由は、中小企業庁による調査24(2011年)で相談する専門家として税理士が多いこと、協議会の支援手法で管理会計的な手法が数多く採用されている点を重視した結果と推測される25。経営革新等支援機関の支援が必要な状況に陥った中小企業等の改善には、財務面の支援は重要だが、事業面の分析を徹底したうえでの改善が重要である。その場合、財務面の公認会計士や税理士とともに、事業面での支援ができる中小企業診断士や事業系の民間コンサルタントの組み合わせが有効である。ところが、費用面や専門家のマッチングの問題から、税理士による単独での取組も少なくない。そのような状況において、税理士のみの支援による取組みが実施される場合に経営改善が期待できるのか疑問が生じる。また、金融機関にとって債権カットを望まない下で、弁護士が活躍する場面は少ない。②支援上の問題企業の経営不振の理由(「帝国データバンク全国企業倒産集計」2012年)として、「販売不振」が80%、「放漫経営」、「業界不振」、「売掛金回収難」が1%程度である。それらの対応策の立案に税務の専門家である税理士が関わることには疑問がある。一方で、経営の専門家である中小企業診断士の認定率は、2%に過ぎない。このような状況では経営改善における改善計画の中の施策提案において、事業面に関する検討が充分にできないのではないかという懸念が生じる。また、財務数値を中心として、事業面の施策に関しては平均的な改善策の提示で終わるのではないか、そのため、具体的で実効性のある取組み促進が可能なのかという点で疑問もある。さらに次の問題点が挙げられる。・情報の入手経営革新等支援機関は、支援策や他の経営革新等支援機関についての情報提供について産業経済局からのメール等で得ているものの「中小企業等の経営情報に関する情報を得るルートがない。そのため、どの企業が困っているかつかめない状況」(「けいざい真話」『朝日新聞』2013年5月10日付)である。企業自ら相談するか、金融機関等からの情報提供がない場合には、実際の支援に結びつかない。・金融機関との協力体制の構築経営革新等支援機関は、経営改善計画の作成支援において、最終的に補助金を得るために、金融機関の合意を得ることが必要である。公表されている経営革新等支援機関の仕組を単純に判断すると税理士及び税理士法人など金融機関との調整経験の少ない者が当事者となって、合意をまとめることになる。しかし、取引先に対する金融機関としての支援方針が事前にわからない場合や支援の必要性に関する認識にギャップがある場合には、金融機関が計画を認めることは期待できない。また、金融機関との調整に日数を要する場合には、予定した費用を上回ってしまうことになりかねない。そのため、実務上は金融機関との事前打合せに基づいて取組む必要がある。一方、金融機関では担当する部署の要員が限られている。これらの点もあり、現実には経営革新等支援機関の全てが金融機関との協力関係を構築するのは難しく実行件数が少ない原因と考えられる。24 中小企業等3,000社に対する調査。経営相談の相手の68.1%が税理士・公認会計士、23.1%が金融機関。25 極論すると管理会計⇒会計⇒税理士という机上のデータを基にした取組みとなったことが考えられる。一方で、税務会計からの脱却を促進するという深慮により税理士の認定が進められたということであれば、理解もできる。ただし、この場合でも実際の事業性を支援する中小企業診断士や経営コンサルタントの認定が進んでいない。この点は、金融機関の経営改善等の取組みにおいて中小企業診断士との連携が進められているという実態とも離れているため、改善が求められる点といえる。金融機関合計(4%)税理士(75%)弁護士(10%)公認会計士(7%)民間コンサル(2%)中小企業診断士(2%)75%10%7%2%2%4%(出所) 金融庁ホームページ公開資料(平成25年6月)を基に作成(金融機関や税理士法人等の支店は含めない)図表8 経営革新等支援機関の種別(n=11,156)

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