RSS中小企業支援研究創刊号
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41中小企業支援研究 Vol.1図表9-1は、金融機関外の経営革新等支援機関が中小企業等からの依頼に基づいて計画作成し、金融機関に協力を求めて補助金を申請するイメージである。ただし、この場合は金融機関が同意するという保証はない。金融機関との調整が整い、経営支援センターの承認が得られて初めて補助金が支給される。つまり、金融機関が同意可能な計画であることが求められる。このため、実務的には金融機関との打合せを基にして計画作成を進めることが不可欠である。特に、複数の金融機関が関与し、その業種が異なる場合には調整は難しくなる。その場合には、主要取引先である金融機関(メインバンク)が他の金融機関との調整を担うことになる。つまり、金融機関との協力関係を事前に構築しておく図表9-2のイメージが円滑な支援には、不可欠となる。このように経営改善にあたっては、貸し手である金融機関の意向を勘案せざるを得ない。一方で、金融機関に配慮しすぎる場合には、中小企業等の実態や事業の継続及び持続的な発展への支援とそぐわない計画、つまり、中小企業等にとって厳しい償還方法・期間となる計画、反対に規律づけが不十分で改善の促進が曖昧、またはモラルハザードを招きかねない計画になる可能性を否定できない。・経営改善計画作成支援における費用負担補助金があるといっても、1/3の自己負担が必要である。経営状況が厳しい中小企業が当該資金をねん出することが可能なのかという“入り口”での問題がある。特に、財務分析調査(財務デューデリ)を実施する場合には調査費用は少なくない26。もっとも、この費用を抑制する場合は、財務分析調査はある程度手間を削減するか分析を担う専門家に係る費用を引き下げなければならなくなる。つまり、支援において重要な財務的問題の把握や質的レベルが限定されかねないという問題も生じる。同様に、事業分析に係る費用でも一定の費用を必要とする。また、経営革新等支援機関においては弁護士の認定も高い割合であるが、弁護士費用は高額であり、その費用を補助金の範囲内で賄うことができるのかということも疑問である(注22参照)。このように、費用問題の解決は実際の経営改善において大きな課題といえる。さらに、中小企業等の経営者が経営改善計画の作成自体に慣れていないこと27、また、経営計画の作成の必要性について教育、意識醸成がなされて来なかった点を踏まえて、多くの経営者から計画作成とその実行に関する取組み実施の必要性の理解が得られるのかということも懸念される。5.中小企業等の経営改善における課題(1)中小企業等に対する支援とその前提①長期的な視点に立った支援の必要性経営改善が必要な中小企業等の多くが、償還年数(図表2)及び借入金額の増加(図表3)、そして個人事業者の営業赤字の割合(図表4)から、協議会及び経営支援センターの数値基準を満たすことができないと推中小企業認定機関打合せ改善計画作成受入要望同意計画持ち込み金融機関支援センター中小企業認定機関事業・財務分析改善計画作成改善計画作成依頼改善計画作成支援決定持込(承認要請)支援センター金融機関中小企業認定機関打合せ改善計画作成受入要望同意計画持ち込み金融機関支援センター中小企業認定機関事業・財務分析改善計画作成改善計画作成依頼改善計画作成支援決定持込(承認要請)支援センター金融機関26 売上高20億円ほどの中小企業に対して、金融機関から大手監査法人系コンサルティング会社を使用して経営改善計画を作成することが求められ、その費用は400万円という事例がある。その費用は当該金融機関が融資するとしたものの、計画作成を委託する会社に対する選択肢はなかった。支援を得る中小企業の立場が弱いことを示す例である。27 全国商工会連合会の「中小・小規模企業の金融円滑化対応実態調査」(2012年)によると条件変更等を申し出たものの経営改善計画書を作成していない中小企業等の割合は36%である。図表9-1 経営革新等支援機関の仕組み①図表9-2 経営革新等支援機関の仕組み②

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