RSS中小企業支援研究創刊号
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49中小企業支援研究 Vol.1さらに、TL構成因子と企業成長力との関連性や当該因子得点の企業成長力に与える影響度合いを検討するために、相関分析を行った。企業成長力が+600を超える値と、-600を下回る値を示した4ケースの外れ値を除外した状態で、各変数の平均、標準偏差およびPearsonの相関係数を求めた結果(表3)、社長の変革型リーダーシップのレベルを表す「TLスコア」と企業の成長力を表す「成長力総合」の間には、有意な相関は示されなかった。また、「TLスコア」と「売上成長」、「営業利益成長」、「経常利益成長」の間にも、有意な相関は見られなかった。しかし、企業成長力を表す「成長力総合」と変革型リーダーシップの構成因子である「理想的影響行動」、「鼓舞する動機付け」は、5%水準で有意な相関が示された。また、「経常利益成長」も「成長力総合」と同様に、「理想的影響行動」、「鼓舞する動機付け」は、5%水準で有意な相関を示した。さらに、「営業利益成長」と「鼓舞する動機付け」も、5%水準で有意な相関を示した。以上から、企業成長力は、変革型リーダーシップの構成因子である「理想的影響行動」、「鼓舞する動機付け」と何らかの関係性があるといえる。また、企業成長力を構成する「経常利益成長」についても、「理想的影響行動」因子と「鼓舞する動機付け」因子とは何らかの関係性があるといえる。さらに、「営業利益成長」は、「鼓舞する動機付け」因子と何らかの関係性があることがわかった。これらの結果から、変革型リーダーシップのレベルと企業成長力のレベルには、直接的な相関関係は見出されなかった。しかしながら、「理想的影響行動」や「鼓舞する動機付け」の度合いと企業成長力の度合いには、何らかの相関があることが明らかになった。次に、変革型リーダーシップの五つの構成因子の因子得点が、企業成長力に与える影響を検討するために、変数増加法により重回帰分析を行った。その結果は、表4に示すとおり、「理想的影響行動」から「企業成長力」に対する標準偏回帰係数が、有意であった。しかし、「鼓舞する動機付け」から「企業成長力」に対する標準偏回帰係数は、有意ではなかった。また、「カリスマ」、「個別的配慮」「知的刺激」などの他の因子についても、有意ではなかった。これらの結果から、「理想的影響行動」は、「企業成長力」に対して影響を及ぼしているといえる。つまり、「理想的影響行動」を高めることが、「企業成長力」を高めることに直接的につながるといえる。しかし、「鼓舞する動機付け」については、「企業成長力」との相関は示されたが、「企業成長力」に対して、直接的に影響を及ぼしていないことが明らかになった。尚、今回の重回帰分析において、多重共線性の発生の可能性についてVIF を算出し、そのチェックを行った。結果、多重共線性の発生の可能性は見られなかった。表 3 各変数の平均、標準偏差およびPearsonの相関係数 (n=31)*p <.05 ** p <.0112345678910平均SD1.TLスコア -.78**.83**.84**.78**.74**.23.31.26.33-0.423.972.カリスマ -.57**.68**.45*.40*.25.24.15.25-0.130.983.理想的影響行動 -.71**.57**.44*.25.33.40*.42*-0.051.014.鼓舞する動機付け -.45*.48**.15.36*.39*.41*-0.041.035.知的刺激 -.62**.23.11-.05.09-0.081.016.個別的配慮 -.03.19.11.15-0.120.967.売上成長 -.55**.07.55**32.3552.368.営業利益成長 -.62**.94**5.83106.819.経常利益成長 -.81**4.12104.1010.成長力総合 -42.29213.78出所:佐竹恒彦(2007)P.51の表から抜粋理想的影響行動.42*.18*β*ρ<.05, β :標準偏回帰係数R2表 4※変数増加法により決定係数(R2)のF検定の有意確率が、5%水準で独立変数の投入を打ち切った。出所:佐竹恒彦(2009)P.160の表から抜粋

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