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③事業の再生、④知的資産(事業性評価)というキーワードを中心に進めていき、最終的には中小企業の経営者にとって何が課題で何を共に学んでいけば良いかをお話しさせていただく。少子高齢化が進展する中、中小企業における後継者不在による廃業率の高まり、60歳を目前とするような経営者の平均年齢の上昇を背景に、親族内への承継が5割強、従業員等への承継も含めた第三者承継が4割強ほどの現状のもと、「相続問題」というデリケートな扱われ方もあり事業承継の問題を複雑化させている。■事業承継支援の新しい潮流中小機構「事業承継支援マニュアル」※1内に詳細な記載があるが、前工程は「こんな課題があるのでは」ということを見つけて整理する、後工程は「経営者が経営・事業そのものをどうするか考える」「後継者を誰にするか決める」という重要な支援、企業には取組みであり、さらに税務問題や法務問題が課題となる。中小機構は従来、事業承継は相続や相続税等の節税を中心とした対策が重要課題と認識してきたが、現在、事業承継は「事業そのもの」「“事業” の“承継”」という経営課題であり、財務諸表に表れない会社の強みや個性を引継ぐことが重要であると認識している。■事業承継の課題事業承継の課題は大きく3つに整理される。①は「事業そのものの課題」であり、事業の掌握、事業環境の認識、リーダーシップによる自社の魅力の発揮を踏まえ、営んできた事業の現状を考えることが必要である。②は「事業を誰に託すか」であり、後継者の方向性を見極めていく必要がある。経営者は後継者を誰にするのか決めているが、後継者は本当の意味での経営者になる覚悟ができていないケースが多い。また経営者は計画的に承継する必要性の認識が希薄な傾向があり、経営者は後継者に明確に意思を伝えて、後継者は覚悟の上で経営者の申出を受けるという過程が必要である。ある会社の事業承継の話がある。なかなか言えない父となかなか言われない息子に二人だけの時間ができ、事業について話すうちに「会社を継いで欲しい」と。その言葉が発せられてから息子が承継を決めたのが約半年後、気持ちがあっても完全に覚悟を決まるまでに相当な時間がかかることを承知して置かねばならない。経営者自らが直ちに何らかの動きを取るべきところ、早急な準備が必要であるにもかかわらず後手に回っていては事業承継は困難となる。さらに後継者を支える人材を作っていく必要もある。なお課題①②の解決の主な担い手は経営者と後継者である。③は「事業を託す相手により個々に生じる課題」であり、親族内承継であれば贈与・相続方法や贈与・相続税、従業員承継であれば事業引継ぎの資金準備や経営者保証の問題、引継ぐ相手がいなければ「譲渡についての相手探し」の問題、引継がれる方は資金準備の問題が大きな課題となる。これら課題解決の主な担い手は親族内承継を中心として顧問税理士等の税務会計の専門家、株式分散等の問題があれば法務の専門家である。経営者が事業承継期に為すべきことは「“事業” の“承継”」という経営課題に取り組み、事業承継は自分には関係なく無理だ、先生の力を借りずにはできないではなく、経営者自ら「見ていくこと」が重要である。■「知的資産の承継」と事業DNA (事業の意義・魅力・価値)ヒトの承継、資産の承継、目に見えにくい経営資源の承継という3つの大枠がある。ヒトの承継は経営者から後継者、経営者を支える幹部から後継者を支える幹部へという流れである。資産の承継は自社株式、事業用資産、資金があるが、そのうち個人の財産は相続税対策としては重要だが一部の問題に過ぎない。最も大事なものは引継ぎが難しく目に見えにくい経営資産の承継であり、この会社らしい仕事の仕方、取引先との関係、ものづくりの仕組み等を確認して引継いでいくことが重要である。これを中小機構では「知的資産」、金融機関では「事業性評価」と言っており、その事業の意義や事業展開の仕方を理解すること、財務諸表に載らないものでありこれらを見ていかなければ後継者に託すべき事業を説明できないことになる。なお知的資産は広い概念なので構成資産を整理しておく。人的資産は人がいなくなると一緒に持ち出されてしまう、なくなってしまうもので、社長のリーダーシップや技術力のある従業員、その従業員がいなくなるとなくなってしまうものである。構造資産はその従業員の技術を引継ぐマニュアル等が残されていれば、他の従業員に引継がれていくものである。また頭の中にある顧客データベースがパソコンに入力されていれば次の状況に繋げていけるが、何時、どんな顧客が、どれくらいの量の、こんなものを買ってくれたという「こだわり」の部分が引継がれなければ、単なる顧客名簿に9中小企業支援研究 Vol.3

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