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過ぎない。関係資産は如何なる販売先や仕入先と、如何なる付き合いをしていたかを残しておくことである。ところで創業期には「こんな面白い分野で仕事をしてみよう」ということで事業の意義・魅力・価値を見出して事業を始めたが、その際には何らかの創業計画を自分の頭で考えてあるいは紙に書き出して事業を始めたはずである。まさしく事業を始める時に生まれた、事業をする必然性のようなもの、ここから事業承継の第一歩が始まっているのである。創業から事業承継は始まっているという意識に中小機構も考え方を変えてきており「事業のDNA」という言い方をしている。■事業承継と知的資産経営事業承継期の企業の方々と会話を進めていくと「強み・弱み・機会・脅威」等が表れてくるはずである。会話により歴史・沿革の軸、仕事の流れの軸を掴み、強みや弱みや経営環境の把握、これまでの仕事の仕方やこれからの仕事の方向性を考えることが事業承継における「“事業”の“承継”」の根幹となる。単に聞いているだけでは見落とすところに事業の「らしさ」や課題があり、この状況を経営者と後継者は認識し改善する、そのために何が必要かも考える。そのサポートを地域の金融機関や商工団体、中小企業診断士等の支援者が果たしていくことが必要である。ここで支援者が必ず聞き出すべきことは「何時、何処で、誰が」ではなく、「なぜその時期に、なぜその場所で、なぜその事業を、なぜその人(創業者)が始めたのか」ということから入り、その後の大きな社会変化における転機、そこをどう乗り越えてきたのか、できなかったのかということ。このような歴史・沿革を見ること、つまりDNAが誕生・変革する瞬間を経営者は後継者に伝えていかなければならない。伝えることで将来の変化への対応を経営者と後継者が並走しながら考えていくことができるのであるが、残念ながらいきなりバトンタッチしてしまう事業承継がとても多いのが現状である。このようなことを見ていこうとする試みが知的資産経営である。財務諸表には表れないが特色として積み上げてきたことを、後継者は経営者から聞けるうちに聞いて確認しておかなければならない。聞かなくても事業は承継できるが聞くことでその「想い」を引継ぐことができれば、創業者が考えた「目指すべき姿」がさらに強く見えてくる。経営者と後継者が、今までの30年40年ではなくこれからの10年20年30年をどうすれば存続していけるのかという環境を認識すれば、もっと強く見えてくる。事業承継には1年や2年では時間が足りず、5年や10年はかかるものである。時間がかかるので早くやろう、60歳になったら早くやろう、70歳になったら時間がない、このような話ではない。経営者が為すべきことは「事業そのもの」についてしっかり後継者に伝えていくこと。事業の承継期には「この事業にはこんな良いところがある」ではなく、「なぜこの事業にはこんな良いところがあるのか」という通常以上の深掘りが大事であり重要なのである。■経営承継円滑化法と事業性評価平成20年度に導入された経営承継円滑化法は、本年1月から3つの仕組みに改善されている。簡潔には①事業に関わる資産は事業継続を要件に贈与・相続税の納税猶予、②親族内承継で相続の場合の生前贈与株式を遺留分の対象から除外、また評価額が予め固定されることで、経営者による事業承継時の問題への取組みを支える民法の特例の適用、③株式分散状況に応じた必要な措置や資産規模の増大による株価上昇時に発生する納税に対する金融支援の導入が挙げられる。事業承継は「事前」、少なくとも「事前の“準備”」が必要で「事後」にならないことが大事であり、経営承継円滑化法を事前に確認すること、つまり経営者は「誰に引継ぎ、どのように事業承継を行っていくのか」という基本方針だけでも確認することが重要である。最後に一言申し上げると、会社の魅力を承継していくこと、つまり「知的資産の承継」が事業承継の核心であり、あるものはしっかり伸ばしていく、ないものは認識して改善していく、それにより将来性や継続性を見極めるという意味合いが事業性評価の話である。その事業性評価の見方は支援者にも経営者にも大変重要であるということを、本日はご参加の皆さまにも解っていただけたかと思っている。中小機構としては支援者や経営者の皆さまとスクラムを組みながら、今後も様々な施策に取り組んで参りたい。報告1中小企業診断士 CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士魚路剛司氏■そもそも「事業承継」とは?本日は「金融機関の支援事例」ということで、まず10中小企業支援研究

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