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本題に入る前にイントロの説明を、続いて問題となる「7つの視点」を挙げつつ考察を加えた後、現状進捗している事例をお話しさせていただく。そもそも事業承継とは、①「経営の承継」、②「財産の承継」をいう。経営の承継には、後継者の決定・教育、後継者を支える組織体制確立、さらに目に見える「ヒト・モノ・金」、目に見えない「経営理念、営業力・開発力・技術力・ノウハウ」等の経営資源の承継があり、財産の承継には、自社株の承継がある。まず対策の前に現状把握、それから問題点・課題の抽出、続いて計画・対策の実行、さらに見直しというPDCAサイクルを回す形で事業承継を捉えることが望ましい。様々な経営者と接する機会の中で「事業承継対策は結局相続対策だろ?」と言う方もいる。その際「相続対策の登場人物は「被相続人」と「相続人および相続人予定者」のみ、相続人予定者が複数出てくることもあるが、相対で利害関係はこの2者。対して事業承継の登場人物は「役員や従業員」「家族」「株主」「取引先」「金融機関」等でこれら支援者の賛同・同意により初めて事業承継は成功する」と話し諭す。相続対策より事業承継の方が理解を得るのが難しい一端を明示した会話のやり取りの一例である。■金融機関の現場から「7つの視点」7つの視点、①「経営者の年齢はいくつか?」今日平均寿命は80歳を、健康寿命は70歳を超えている。一方経営者の平均年齢は60歳弱、退任年齢は70歳弱で健康寿命と退任年齢は約70歳という状況で、経営者自身の年齢に対する意識付けが必要である。さらに60歳以上の経営者のうち、3分の2は後継者が不在であり事業承継を一層難しくさせている。②「後継者はどなた?」事業承継を考える場合「誰に」「何時」「どのように」という3つの柱があるが、この「誰に」が一番重要かつ困難な問題で、まず「誰に」を決めなければならない。「誰に」が決まっても「何時」「どのように」は、経営者は日々多忙を極め事業承継が後回しになる現状がある。その状況を整理するために「見える化」が必要であり、経営者と後継者が一緒に「事業承継計画書」を作成することが重要である。③「役員構成はどうなっているか?」後継者がすでに役員になっている場合でも後継者教育は重要であり、事業承継計画書への織込も考慮する。後継者の中には「財務に強くなりたかった」と話す方もおり、決算書や資金繰表の見方や作成方法が分かるよう事業承継前から勉強する必要がある。とかく経営者は「売上伸長」に集中する傾向があるが、「売上や営業」と「財務」は“車でいえば両輪”、一緒に動かさなければならない。また事業承継税制についても触れておく。これは一定の条件で自社株を後継者に贈与した場合に贈与税が猶予される制度で、後継者の役員就任後3年以上必要で活用する場合は事前に同計画への織込が必要である。④「株主構成はどうなっているか?」経営者の持ち株比率が過半数では不安定であり、定款変更の特別決議に必要であり安定経営の目安となる3分の2以上の持ち株比率が望ましい。さらに名義株株主(第三者株主)が7・8人いる場合は要注意で、名義株は「真正なる名義人」に早急に変更して名義株を保有する第三者の相続発生に備えることで、経営と無関係な者への株の移転を阻止する。加えて経営者が「定款・就業規則」を見直し後継者に引き渡すことで様々なリスクへの対応・回避を施して経営の安定を図ることが必要である。⑤「関連会社はあるか?」④「株主構成はどうなっているか?」と同様、各法人の経営者や株主構成の確認とグループ全体としての方向性の検討が必要がある。⑥「自社株式の評価はいくらか?」毎期計上した利益が純資産として積み上がるが、事業承継時に自社株の財産の承継、つまり当初資本金の何倍もの規模に増大することで後継者への承継に問題や課題が発生する。決算時に定期的な顧問税理士への確認、もしくは金融機関が展開する「資産サービス」の活用により「実際にいくらなのか」を現状認識することが必要である。⑦「役員借入金はあるか?」役員借入金の放置は経営者死亡時に個人相続財産となり相当額の相続税が発生する可能性がある。よって債務超過であれば債権放棄を検討して財産を圧縮、財務体質の改善にもつながる「欠損金の繰越控除」(現状9年間、平成29年4月1日以降は10年間)や「DES」(負債勘定の借入金を資本金勘定に移して財務体質を改善・強化)の活用、さらには「経営者保証制度」の活用は効果的である。現在も銀行から借入時に中小企業経営者には連帯保証が求められるが、事業承継により連帯保証を求められた後継者が「だったら社長はできない」という事案に対処するため、国が一定基準(財務内容の強化や個人と法人の貸借の完全分離等)を設けてそれがクリアされれば連帯保証解除の検討が可能となるものである。事業承継計画の立案時には、上記のような様々な11中小企業支援研究 Vol.3

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