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施策の活用を含んだ計画とすることを、金融機関等の支援者は経営者によくよく話し諭すことも必要である。■「7つの視点」を含んだ進捗事例【事例】X社(業種:サービス業、年商40億円、利益1億円、資本金1千万円、純資産(自社株/簿価)5億円だが近年の時価は7→9→10億円と右肩上がりの状況でさらに借入なしという金融機関にとっては融資して新規開拓したい魅力的な会社である。役員構成は社長・創業者A氏70歳(平均的退任年齢・健康寿命に合致)、専務で奥様B氏65歳、常務で長男C氏40歳(就任2年)、他の親族外の取締役3名となる。株主構成は代表取締役A氏の100%保有で、加えて個人資産が自社株5億円、自宅5千万円、不動産2億円、現金3千万円から合計7億8千万円程の財産評価になる。親族関係はA氏の両親は他界、兄弟はA氏含めて3名、A氏の子供は長男C氏含めて3名(長女は嫁ぎ先で専業主婦、次男は別会社勤務)、それと奥様B氏となる。よって、A氏とX社の関係は経営権上は全く問題ないが70歳という年齢から事業承継について何らかのアクションが必要なことから、A氏とヒアリングを行い判明したことがある。A氏は自らが創業した会社の後継者は長男C氏に決めており(長女や次男も了解済み)、C氏にもその意思を伝え了解を得ている。さらにA氏には、X社はC氏とだけで周囲に迷惑をかけずに何とかしていきたい、遺留分や“争続”問題は絶対に起こしたくない、という思いがあった。そこで、財産移管方法①贈与、②譲渡、③遺言の中でA氏の思いを成就するには「生前譲渡で承継」が最善策として提案して、生前譲渡方法(①A氏→C氏、②A氏→X社、③A氏→持株会社)から③のスキーム※2を採用した。なお、「生前譲渡で承継」する際のメリット(◇)・デメリット(◆)を以下に纏めておく。◇換金性の乏しい非上場株式が換金可能となる。◇将来後継者が相続するのは株式ではなくオーナーが換金した現金であり、その現金の一部を相続税の納税資金に充当することができる。◇売却した株式に係る相続税の問題から解放される。◇将来の株価上昇を抑制することができる。◇株式贈与でなく株式売買のため、将来の遺留分対策にもなり“争続”問題にも全く関係がなくなる。◆持株会社は株式購入資金を準備する必要がある。◆将来業績が悪化した場合に借入金の返済に苦慮する場合がある。◆新会社を設立するための各種コストや事務負担(例えば毎期ごとに決算書の作成)が発生する。◆売却したオーナーに譲渡所得税20%が発生する。■金融機関による事業承継支援現在の顧客ニーズは非常に多様化・高度化しており営業店だけで対処しきれないこともある。企業のライフサイクルの中で、事業承継問題をはじめ経営者は日々悩んでいる。金融機関に配置された専門スタッフ(中小企業診断士やFP等)も活用することで問題・課題の解決に導くべく、今後とも努力して参りたい。報告2有限会社酒舗まさるや 専務取締役 園部 将氏■話題の酒屋「酒舗まさるや」とは?本日は「先代の事業をどう継承するか私の挑戦」と題して報告させていただく。私は昭和46年3月11日生まれの44歳、大学卒業後は洋酒・ビールメーカーS社に就職して3年半勤務した後、平成6年「(有)酒舗まさるや」に入社した(戻ってきた)。昭和43年、父(代表者・社長:園部松男氏)が町田市の鶴川団地内の商店街で酒屋を創業する(現在、鶴川団地は2~3割が空室で住民の平均年齢も70代であるが、22軒ある商店街に空き店舗がなく“元気な商店街”として頻繁にマスコミ取材もあり、近隣小学校の社会科見学件数も多い)。昭和61年、高校受験時に父から「酒屋を継ぐ気はあるのか?」と問われると、何も考えぬまま「やります!」と答えると、「明日からは“まさるや”だ!」と私の名前(将:まさる)に因んだ会社名に改めるという話であるが、実は「どこにも“勝る”酒屋であって欲しい」という理由のようです。従業員9名、アルバイト1名の計10名、売上7億2千万円、店舗面積14坪という会社規模である(平成6年当時、従業員は父、母、私、他社員2名の計5名、売上約3億円)。売上構成比は日本酒48%、本格焼酎45%で、ビールは1~2%程度に過ぎない。売上比率は一般客55%、飲食店45%だが、これは人数割合であり、金額的には飲食店が若干多い状況である。特長として、品揃えはほぼ日本酒と焼酎、加えて梅酒や果実酒等の和リキュール、国産のワインやウイスキーであり、全国約200の蔵元と直接取引により、要望のある酒類はほぼ揃っており、土日には都内に限らず関東近辺から車で買いに来られる方が多い。基本的12中小企業支援研究

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