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うすると後継者が従業員であった場合には銀行から「今日からあなたが代表者だから連帯保証人になって」という要請は当然有り得る。急に数千万・数億円の連帯保証を受け入れることができるであろうか、このような事情が事業承継のネックになっている。よって、経営者には事業承継を考える前に企業の財務内容を綺麗にすることを助言している。この制度には財務状況の上昇・改善等の基準や法人と個人の区分、例えば経営者個人が会社に資金を貸している、もしくは法人の車で経営者個人がゴルフに行っている状況があってはならず、法人は法人で個人は個人でと明確に区分けされている必要があり、基準として示されている。このような基準をクリアしながら、将来自らの会社を従業員が事業承継する時に、連帯保証人となることがないような会社にすることを意図した仕組みである。シンポジウム記録執筆者中小企業診断士(千葉商科大学大学院中小企業診断士養成コース修了)柴田多敏 本日の皆さまの報告に共通したキーワードとして事業承継における“人”の重要性が挙げられていることを踏まえ最後に、従業員目線からの事業承継について私の所感を述べさせていただく。私自身、創業約100年の中小企業(業種:卸売業、従業員数:約100名)で3代目の若き後継者の近くで勤務した経験から強烈に感じたことは、後継者と従業員間の「相互理解」がとくに親族内承継であれば一層不可欠で重要な要素であるということ。後継者が高い経営理念と経営目標を掲げて強いリーダーシップを発揮して新たな事業展開を試みようとするが、従業員がついていけなければ、ただの空回りに過ぎず、理念や目標の達成どころか従業員の“心の離反”を招きかねない。相互理解を醸成できる現場経験を経ることなく従業員の辛さや苦しみを“肌感覚”で理解できぬまま、いきなり役員として「“上から目線”で土足で会社に上がり込んできた」と多くの従業員から受け止められてしまった。少なくとも数年間の現場経験を経て現場で働く従業員と「ともに汗をかき、ともに泣き笑い」という“同じ高さの目線”を共有体験した上で、問題点や課題の解決に指導助言が為されていれば「この会社の、この社長のために」「会社への強い思い入れがあるから、この会社で働くんだ」という、心の底からの忠誠心を伴ったモチベーション行動も有り得ただろう。とくに中小企業は大企業と比較して人ひとりにかかる様々な業務負荷が重く、各従業員への目配りは欠かせないものである。後継者はこうした「心からの交わり」を伴った従業員に人材育成を施し、時には自分の右腕として行動してもらい、時にはブレーンとして何ごとも相談できる欠かせない戦力として活躍してもらう。後継者は彼らを伴い先頭に立ち従業員全員を引っ張り、会社の存続と発展を究極の目標として事業展開する、こうして事業承継は完成されるものと考える。精神論だと思われるかもしれないが、私はそう確信している。※1 事業承継支援マニュアル   http://www.smrj.go.jp/keiei/jigyoshokei/081348.html※2 平成27年10月1日から千葉県信用保証協会にて事業承継サポート保証「みらい」がスタートしている。※3 事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)作成マニュアル   http://www.smrj.go.jp/keiei/chitekishisan/059975.html   (※1、※3は中小企業基盤整備機構のホームページよりダウンロード可能)齊藤 壽彦経済研究所 副所長/中小企業研究・支援機構長千葉商科大学商経学部教授/博士(商学)大山 雅己ジュピター・コンサルティング(株)代表取締役、中小企業基盤整備機構事業承継・引継ぎセンター事業承継コーディネーター。事業承継や知的資産経営をテーマとした著作・講演実績が多数あり。魚路 剛司中小企業診断士、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。千葉商科大学大学院中小企業診断士養成コース修了。平成27年4月1日号から1年間「近代セールス」毎月1日号に連載中。園部 将(有)酒舗まさるや 専務取締役大手酒類メーカー退職後平成6年同社入社。国産の本格的な日本酒と焼酎の豊富な品揃えにこだわり、進取の取組みで話題の「街の酒屋」。http://www.masaruya.com/コーディネーター報告者15中小企業支援研究 Vol.3

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