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INTERVIEWい持っていることが重要で、そうでないと作れません。どら焼きは酒を入れるとビシャビシャになりますので、酒と蜜がうまくミックスするように焼きあげる工夫が必要です。酔っぱらわれても困るわけですから。簡単ではありません。うっかり新商品を作っても売れず、安く売ったらたくさん売れましたが、ほかのものを買わず、売れてもその影響で全体の売上が落ちた時もありました。価格の設定は重要です。前田 仕事はモノを作るだけではないということですね。大角 お菓子も材料はいっぱいありますし、和菓子作りの楽しみは、モノをイマジネーションして形にして作り上げたものが、お客様に受け入れられて喜んでいただいたとき、それがモノづくりの喜びです。モノづくりの楽しみはお客様の喜びとともにあります。そこが商売の醍醐味です。前田 その楽しみの根源についてもう少し詳しく教えてください。大角 日本の食べ物は繊細ですし、種類も多く、選択肢が多いということはそれだけ優れているということです。色彩もそうですし、多いだけでなく季節も移り変わりがあり、食べておいしい部分だけでなくいろいろ工夫をするところが多いと思います。自分の表現したいものがあって、色彩も外国にない色が使える魅力もあります。林  時代が豊かになるとともにお菓子の種類も増えましたね。前田 生きるためだけの食品でなく、自分を表現したいものが活かせることは重要な楽しみですね。中でも食の文化に関わり、人間の情緒に触れるもので、研究すればするほど奥深いものがあります。大角 昔は歌の文句にも思いを馳せるものがありました。今は簡単になってしまいました。言葉の中にも憂いがあったり、喜びがあったり創造するものがありましたね。情緒、至福を理解するには時代の背景を理解する必要もあります。前田 お客様の価値はお客様自身が感じた経験上の価値ですから、経験していなければ分かり合えないですね。大角 若い人には若い人の言い分もあるでしょうから。お客様の求められるものには形がないものですから想像力が重要ですね。想像力がなくなると商店街でも繁閑格差が出てきました。前田 社長は地域商店街の商店会の会長としても活躍してこられました。商店街の店の中には消滅する状況に追い込まれている店もありますが、いかがお考えですか。大角 店を閉めた後に、同じ場所でチェーン店などの店ができたりして結構稼いでいる姿を見ますと、努力が足りないといわなければならないかもしれません。やってみたらといってもまねする人も少なかったと思います。成功する人は、いいことは真似たり、思い立ったらすぐやる人です。ダメでもともとなのですから。そのような姿勢から必ず何かが出てくるはずです。前田 そこに成長の種があるということですね、商店街も衰退傾向といわれながら、大型店がこれほど多くできても存在しているのですから、必要としている人がいるし、新たな活路を常に考え続けなくてはなりませんね。まだいっぱい伺いたいことがございますがまたの機会に譲らせていただくことにいたします。本日は、長時間にわたり貴重なお話をありがとうございました。■企業概要企業名株式会社 大角玉屋 事業内容和菓子製造販売代表者大角和平氏(64才)本店所在地東京都新宿区住吉町8−25銀座店東京都中央区銀座西3−1(平成21年開業)四谷店東京都新宿区四谷3−6(平成13年開業)資本金300万円創業玉屋の創業1912年、(和平氏の祖父が買い取り、今日に至る)営業時間6時〜19時店舗数3店舗(新宿本店・銀座店・四谷店)年商4億円(最高時)従業員数25人(内生産8人、家族5人)営業販売スタッフ2チーム営業時間6時〜19時■インタビュア前田 進……千葉商科大学商学研究科客員教授■アシスタント林 幸恵……千葉商科大学経済研究所23中小企業支援研究 Vol.3

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