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に新制度の適用を目指している。具体的には、創業間もない企業や成長産業のベンチャー企業などは保証割合を厚くし、経営が安定している企業の保証割合は最小5割程度に引き下げ、保証区分を細分化する。また、セーフティーネット保証(100%保証)は維持するが、対象企業を絞り込むことも検討していくとみられる。信用保証協会による保証付き融資は中小企業向け融資の根幹にある。2014年度末の保証付き残高は140万社、27.7兆円に達している。もし、一律8割保証の引き下げが実施されると、貸出リスクが増す金融機関は融資審査が厳格になることは想像に難くない。信用補完のために、今まで以上に「正確な財務データ」提出や経営計画の策定などを求めることも考えられる。信用保証協会の保証付き融資を受けている企業は、今のうちに心構えをしておくことが必要だ。消費税率の引き上げと軽減税率の導入2017年4月、消費税率が8%から10%への引上げ実施に際し、自民党と公明党は生鮮食品および加工食品(酒類および外食を除く)を消費税の軽減税率の対象品目とすることで合意した。消費税は、低所得者ほど収入に対する生活必需品の購入費割合が高く、高所得者より税負担率が大きくなる「逆進性」問題が取りざたされてきた。今回の軽減税率の導入は、低所得者層の痛税感の緩和がある。ただ、この軽減税率には各界から多くの反対意見が表明されてきた。2014年7月には日本経団連、日本商工会議所など9団体の連名で「消費税の複数税率導入に反対する意見」が出され、2014年6月の政府税制調査会でも18名の有識者のうち、16名が軽減税率に反対意見を述べた。経済・業界団体がこぞって反対する理由には、新たに区分経理が必要になり、中小企業に多大な事務負担を強いるなど、様々な意見がある。中小企業は小規模な事業者ほど、日々の取引の記帳にパソコンやレジスター等を利用していないところも多い。2014年3月には消費税率8%への引き上げ対応ができず新潟県でスーパーが破産した。こうした事例もあるだけに、軽減税率の導入は小規模、零細事業者に複雑な事務負担への支援策も必要かも知れない。また、現状の消費税制では、前々年(個人)または、前々事業年度(法人)の課税売上高が 1,000 万円以下の事業者は、消費税を納める義務が免除される「事業者免税点制度」が実施されているが、免税事業者は「インボイス」を発行できない。このため免税事業者からの仕入れに際して仕入税額控除がされず、インボイス方式が導入されると約500 万者の免税事業者が取引から排除される事態も想定される。2017年4月の消費税率10%引上げは、まだ実施まで流動的な部分を残している。消費税率の引上げと「軽減税率」はこれまでに経験の無い新たな問題を惹起させる事態も懸念されるだけに、中小企業の経営には細心の配慮が必要である。「チャイナリスク」問題中国の魅力は安い大量の労働力と奥深い潜在市場とされてきた。日本企業も製造業や流通業を中心に、世界最大の人口13億7,000万人を抱える巨大市場とコスト削減を求め中国に生産拠点をシフトしてきた。だが、中国経済の成長で人件費コストは上昇し、上海株式市場の株暴落と景気減速の懸念も相まって2015年中頃からチャイナリスクが急浮上してきた。2015年には上場企業2社が回収難と景気減速の影響から経営に行き詰まり、民事再生法を申請している。東京商工リサーチでは、2014年1月から倒産原因が下記の6項目のどれかに該当するものを「チャイナリスク」倒産と定義して集計している。①コスト高(人件費、製造コストの上昇、為替変動など)、②品質問題(不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など)、③労使問題(ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など)、④売掛金回収難(サイト延長含む)、⑤中国景気減速(株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど)、⑥反日問題(不買、取引の縮小、暴動など)。2015年(1-12月)に「チャイナリスク」を要因とする企業倒産は76件(前年46件)発生した。負債総額は上場企業2社の倒産で2,346億2,800万円に膨らみ、前年(203億200万円)から大幅に増加した。29中小企業支援研究 Vol.3

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