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時事解説チャイナリスク関連倒産は、上記定義の6項目に大別されている。だが、個別ではライセンス契約に伴う「特許権侵害」の認識ズレなど、国際ルールと異なる中国内の慣習で倒産に引き込まれたケースもあり、グローバル取引の難しさを残している。2015年の「チャイナリスク」関連倒産の原因別でみると、最多が「コスト高」の55件で、全体の72.3%を占めた。中国市場は安価なコストと豊富な労働力が魅力だったが、コスト高倒産が前年の27件から2倍増し、これまでの中国生産の妙味が乏しくなってきている。業種別では、製品の輸入や製造委託などで中国と密接な関わりを持つ繊維・衣服等卸売業が23件で最多。次いで、機械器具卸売業8件、その他の卸売業、食料品製造業が各7件で、それぞれ原皮価格の高騰や人件費上昇が影響した。内需型中心の企業倒産は負債1億円未満の小・零細企業が全体の7割を占めているが、チャイナリスク関連倒産は負債10億円以上の中堅規模の倒産増が顕著となっている。厳しい資金繰りのなか、中国進出で生産コストの合理化を求めながら、想定した業績を維持できない倒産が体力の弱い小・零細企業から中堅クラスに広がっていることがうかがえる。さらに、チャイナリスクの怖さは、国内にとどまる企業に波及する可能性も高まっている。中国国内の景気減速で過剰在庫となった安価な製品が日本に流入し、再び低価格競争の激化、いわゆる在庫デフレを招きかねないからだ。中国経済は新年早々の株価下落で幕を開け、一部では悲観論も囁かれている。それだけに中国産の原材料、商品に依存した国内の中小企業は中国の動向に目を離せなくなっている。事業承継問題少子高齢化の時代を迎え、中小企業の事業承継が深刻な問題として浮上している。2014年版の中小企業白書では、事業の将来を悲観して誰にも相談せず廃業を考えるなど、中小企業の経営者の高齢化と後継者難でスムーズな事業承継が行われていない現状を指摘している。特に、オーナー企業は、高齢の社長が子供への事業承継を希望しても円滑な事業承継が難しくなっている。東京商工リサーチが企業データベース265万社から代表者の年齢データを抽出、 分析したところ、2014年の全国社長の平均年齢は60.6歳で前年より0.2歳伸びた。社長の平均年齢は2009年の59.5歳だったが、2011年は60.0歳と60歳台に乗り、以降も社長の高齢化が進んでいる。社長の年齢分布では、60代の構成比が35.0%で最も高く、70代以上も構成比が年々上昇傾向にあり、2014年は22.5%まで上昇した。社長の5人に1人が70代という高齢化社会をそのまま反映している。一方、30代以下は、2009年から11年まで4.5%で推移し、2012年が4.4%、2013年が4.2%、2014年には4.0%と年々比率が低下し、若い経営者の創業や社長交代の停滞ぶりを示している。売上高の社長年齢分布は、1億円未満では70代以上が最多の2割(構成比21.6%)を占めた。社長年齢別の業績をみると、黒字企業は30代以下の構成比が80.4%で最も高く、赤字企業は70代以上の構成比が22.0%と最も高かった。また、「増収増益」の比率が最も高かったのは30代以下で38.2%に対し、「減収減益」の比率は70代以上が26.8%で最も高く、次いで60代が26.1%と、社長が高齢になるほど業績が厳しいことがわかった。社長が高齢化するほど安定や成長を支えるビジネスモデル構築が遅れ、過去の成功体験からの脱皮が難しく業績悪化につながっていることを示している。裏返すと業績が悪化している企業ほど後継者になるべき人物が承継せず、結果として社長が高齢化する悪循環に陥っている。国も事業承継を促すため、2008年10月に「中小企業経営承継円滑化法」を施行した。だが、7年を経過しても状況は緩和どころか一層深刻さを増している。また、後継者がいない企業のうち82.1%の企業が「廃業」でなく、「事業の売却」を検討していることがわかった。だが、様々な障害があり、現実には事業売却にたどり着けていない。さらに事業売却では経営者が情報漏洩を恐れて事前相談を躊躇する状況30中小企業支援研究

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