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調査報告1.はじめに千葉商科大学経済研究所の研究プロジェクト(研究代表者:栗林隆)では、平成37年(2025年)頃をターゲットとした超高齢社会に対応した市川市の行財政制度のあり方を検討している。現在の市川市の総人口は、約47万2千人(平成27年)あまりで、直近3年間では微増傾向にあるが、市が行った将来人口推計では、平成37年(2025年)に7%減の約43万人に減少するとの試算がなされている。特に、若年人口比率は長期低下傾向(平成2年の17.5%から平成22年の11.5%:総務省『国勢調査報告』)にあり、かつ高齢人口比率の大幅な上昇(平成27年の23.5%から平成37年の27.3%:市川市資料)が見込まれている。また、高齢人口比率に関する一部の試算では、平成52年(2040年)に43.0%という驚異的な数字も報告されている(統計情報研究開発センター資料)。このようなデモグラフィックな構造変化を背景に、市川市の財政は、年々の社会保障費等の義務的経費の増加や市税収入の伸び悩みによる財政硬直化が顕著で、中長期的に渡って構造的な財源不足に陥っている。そのため、財源調達のあり方や歳出構造の見直し、社会保障改革など喫緊の課題が山積している。本プロジェクトは、以上のような問題意識を踏まえつつ、2つの研究班がそれぞれのテーマに沿って研究を遂行している。本稿では、行財政改革プロジェクト班(栗林隆・江波戸順史・青柳龍司・稲田圭祐)及び福祉プロジェクト班(齋藤香里・朱珉・佐藤哲彰)の研究成果の一部と今後の課題を紹介する。2.市税および行財政改革行財政改革プロジェクト班では、個人市民税、法人市民税を中心とした住民税制に関する研究、および市の行政評価に関する研究を行っている。2.1 歳入歳出の現状と問題(1)個人市民税中心の税収構造平成25年度の市川市の歳入(決算)はおよそ1,311億である。「市川市財政運営指針」が指摘するように、市川市の歳入は市税、特に個人市民税中心(平成25年度の市税に占める割合46.6%)に構成されているのが特徴であるが、市川市の高齢化はその負担者の減少を意味し、その対応が今すぐにでも必要であろう。(2)高齢化による扶助費の増大他方、平成25年度の歳出(決算)はおよそ1,275億円であり、その傾向としては、歳出全体に占める扶助費の割合が大きく、その金額は平成17年度には163億円であったが、平成22年度には302億円、平成25年度には339億円と着実に増加している。この背景には高齢化があり、今後はその深刻さが増すと予想される。(3)1%支援制度と個人市民税まず、高齢化が進むことで懸念される財政緊縮を踏まえ、実際に分析したのは、市川市の「1%支援制度」(1)である。1%支援制度とは、市民税納税者らが支援したいNPO等を選び、個人市民税の1%相当額の使途をそのNPOに対して交付できる制度のことである。当研究班では、1%支援制度について、市川市から提供を受けた平成17年度から26年度の合計10年分のデータを基に、納税者や団体の実像を分析した。その分析結果の一端を紹介すると、1)応募する団体数は毎年130団体前後であり、一団体あたりの支援金(補助金)は10万円から13万円前後である。2)投票者の属性については、男女比が7:3となっており、男性が圧倒的に多い(図1)。3)さらに、投票者超高齢社会における市川市の行財政改革栗林 隆、斎藤香里、佐藤哲彰、朱珉江波戸順史、青柳龍司、稲田圭祐(1)正式名称は、「市川市納税者等が選択する市民活動団体への支援に関する条例」という。ここでは、略称として「1%支援制度」と記載する。栗林プロジェクト36中小企業支援研究

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