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調査報告ると、高齢化に強いという法人市民税のメリットが活かせない。そこで、多かれ少なかれ市川市が提供する公共サービスから法人は便益を受けるのだから、負担分任の原則のもと、それに対する負担を求める仕組みを構築すべきであり、それが法人市民税の均等割の負担引き上げであり、外形標準課税化である。このような課税強化によれば、高齢化のもと減少する個人市民税の負担者に代替して、法人は赤字や黒字に関係なく法人市民税を負担することになると期待できる。2.3 市川市行政評価についての研究市川市では、近年、行財政の効率化を目指し、行政改革としてさまざまな取り組みが行われてきた。市川市の行政改革は、基本構想を具現化するための基本計画に示された施策を実現するための実施計画の3層から構成される。基本構想は、現在、①市川市行政改革大綱(対象期間:平成8年度~平成12年度)、②市川市行政改革大綱 フォローアップ編(対象期間:平成12年度~平成14年度)、③新行政改革大綱(対象期間:平成15年度~平成20年度)、④新行政改革大綱改正版(対象期間:平成21年度~平成25年度)の4つが作成されており、基本計画は、第一次基本計画(対象期間:平成13年度~平成23年度)、第二次基本計画(対象期間:平成23年度~平成33年度)が策定され、それぞれの基本計画の下で3年程度の実施計画(第一次~第三次)として各事業が実施されているところである。当研究班では、こうした市川市の行政改革の取り組みを整理するとともに、基本計画に沿って実施された各実施計画(事業)によって、基本構想で示された目的や目標がどの程度達成できているかを考察する。具体的には、平成26年6月に公表された「総合評価書」を基に、各実施計画(事業)の効果や成果について、事業費の予算・決算比較や数値目標の達成割合などから検討する。なお、「総合評価書」では、平成23年度から平成25年度の3年間が評価対象とされていることから、本研究における市川市の行政評価としての対象も平成23年度から平成25年度までの3年間とする。また、市川市が他の近隣自治体に先駆けて公会計改革を進めている事情を鑑み、企業会計上の概念である発生主義で算出された事業別コスト情報を用いて、費用便益分析をツールとする行政評価の析出も試みる。3.高齢者介護と所得福祉プロジェクト班では、次の二つのテーマについての研究を進めている。第一は、所得と要介護発生率そしてサービス利用の関係についての研究である。第二は、在宅要介護者の介護状況についての研究、そして高齢者の健康状態についての研究である。本研究については、市川市内の在宅要介護者および家族介護者、そして元気な高齢者にアンケート調査を行った。現在、アンケート用紙の回収を終え、データ入力中である。本稿では、第一の研究について紹介する。3.1 高齢者の所得格差が要介護発生に与える影響(1)高齢者の所得と要介護発生の関連についての日本における先行研究日本において高齢者の所得と要介護発生の関連について明らかにした研究には、近藤(2000)、酒井・伊藤(2010)、高齢者の所得と要介護状態を招く危険因子との関連を明らかにした研究には、近藤(2007)、近藤・芦田・平井・三澤・鈴木(2012)がある。(2)分析の基本データについて本研究では、2014年3月現在における介護関連データを分析した。日本における本データ量での分析は、筆者は寡聞にして知らない。市川市では、2014年の介護保険料は前年の所得及び世帯状況に応じ15段階以上に分かれている(以下、介護保険の第1号被保険者の所得段階の第1段階を「所得段階1」という)。本稿では、介護保険料段階設定を11区分する(表1)(3)。所得段階1はほとんどが生活保護受給者であり、所得段階5以下は低所得層に分類される。本データの所得段階の中央値は所得段階6、女性は所得段階5、男性は所得段階8であった。女性は男性よりも低所得層に属する者が多い。(3)本データは介護保険の自己負担が全員1割の時点のものである。平成27年8月より高所得者は介護保険の自己負担が2割となったが、本データの所得段階8~10では世帯構成により1割と2割負担が混在し、所得段階11で全員が2割負担となる。38中小企業支援研究

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