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3.3 所得と施設サービス利用について所得と介護保険の保険請求額からみた施設サービス利用で明らかになった点は下記のとおりである。①【要介護度と施設別】保険請求額は、基本的には、要介護度、または施設の違いで、大部分が説明可能である。②【所得段階】これらを一定にしたままで(これらの影響を排除して)、所得段階の効果をみると、直線的推計では「所得段階が上がるほど、保険請求額は減少傾向」となる。さらに2次関数推計に踏み込むと、所得段階7で最小となる放物線状になる。個別に見た場合は所得段階6が最小となり、また所得段階1が顕著に多額の保険請求をしている。③【性別・年齢】男性と女性の請求額の違いは、要介護度や施設を一定にそろえた場合、男女差は数百円程度、年齢差は1歳ごとに数十円程度に過ぎない。4.結語平成27年度において、地方交付税の不交付団体は全国約1800の市町村レベルでは僅か59団体しかなく、市川市はその中のひとつである。この事実は、市川市の財政力指数が高いことを示している。にもかかわらず、市川市の中期財政計画によれば、平成29年度及び30年度において50億円規模の巨額の財源不足額を見込んでいる。その主たる原因のひとつに国民健康保険特別会計の慢性的な赤字体質がある。戦後の国民皆保険導入により、国民は医療サービスの恩恵を受け続けている。国の予算においても、社会保障関係費が年々膨張し、財政を圧迫する要因となっている。従って、この問題を解決するためには国と地方の財政関係にメスを入れなければならず、市川市単独では解消できない。地方分権の流れの中で、市川市単独で実行可能な行財政改革を強く推進すべきである。市川市は、過剰な市民サービスを供給し続けており、その多くは民間で代替可能である。民間部門の経済が成熟した今は、市場経済で供給可能な事業は極力民営化し、行政は公共財の供給に特化するのが望ましい。行財政改革は、「市民の暮らし向きを良くする」ためにある。超高齢化社会の到来を踏まえて、「入るを量りて出づるを制す」べく、体力がある今のうちの抜本的改革を肝に銘じる必要があろう。【参考文献】[1]青柳龍司・栗林隆(2013)「千葉県市川市における1%支援制度の評価と分析̶住民税制と寄 付課税̶」千葉商科大学国府台学会『千   葉商大論叢』第51巻第1号、pp.175-189.[2]近藤克則(2000)「要介護高齢者は低所得者層になぜ多いか̶介護予防政策への示唆̶」『社会保険旬報』No.2073、pp.6-11.[3]近藤克則編集(2007)『検証「健康格差社会」̶介護予防に向けた社会 疫学的大規模調査』医学書院.[4]近藤克則・芦田登代・平井寛・三澤仁平・鈴木佳代(2012)「高齢者における所得・教育年数別の死亡・要介護認定率とその性差:  AGESプロジェクトの縦断研究」『医療と社会』No.22(1)、pp.19-33.[5]近藤克則編集(2013)『健康の社会的決定要因̶疾患・状態別「健康格差」レビュー』日本公衆衛生協会.[6]齋藤香里・佐藤哲彰(2015)「高齢者の所得と介護需要の相関について̶高齢者の所得格差が要介護発生に与える影響̶」『2015  年真理大學財経済学院興日本第三部門研究学会 国際学術交流検討会 論文集』真理大學財経済学院、pp.57-73.[7]酒井美和・伊藤春樹「介護保険サービスの利用と所得について」『医療福祉研究』No.6、pp.25-36.[8]橋本恭之(2015)「個人住民税のあり方について」『税研』Vol.31 No.2, pp.46-51.[9]堀場勇夫(2015)「地方法人課税のあり方について」『税研』Vol.31 No.2、pp.39-45.[10]前畠実(2000)「少子高齢社会にふさわしい地方税制のあり方に関する調査研究報告について」『地方税』Vol.5 No.9、pp.98-128.[11]八塩裕之(2015)「年金課税に関する経済分析」京都産業大学総合学術研究所『京都産業大学総合学術研究所所報』No.10、    pp.69-74.[12]八塩裕之・蜂須賀圭史(2014)「高齢化が所得税の課税ベースに与える影響について:個票による年金課税のシミュレーション分析」財   務省財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』第118号、pp.120-140.[13]山田篤裕(2004)「居宅介護サービスの公平性̶『国民生活基礎調査(平成13年)』介護票に基づく分析」『季刊・社会保障研究』   40(3)、pp.224-235.[14]市川市「市川市財政運営指針」(平成26年度から平成28年度)[15]市川市「市税概要」(平成26年度)[16]市川市「市川市の将来人口推計」(平成24年度)[17]市川市「総合評価書」(平成23年度~平成25年度)[18]市川市「行政改革大綱」(平成25年4月)41中小企業支援研究 Vol.3

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