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48中小企業支援研究学術論文業に残したままで、消費プロセスに入り込み、消費・使用に関わる新たなビジネスを考えることが、今日、求められているといえる。つまり、価値共創マーケティングにとって重要となってくるのは、顧客とのサービス関係をいち早く構築することにある。そのために、まず最初に手掛けるべきは、顧客と直接的な接点(contact)を持つことにある。それは、リアルでもバーチャルでも、或いはそれらの組み合わせでも構わない。そして、先に述べたサービス関係のもとで顧客とコミュニケーション(communication)を図り、顧客と一緒になって共創(co-creation)を進めていく。その結果、顧客にとっての価値である文脈価値(value-in-context)に到達することができる。この一連の流れを価値共創マーケティングにおける4Cアプローチという(村松[2015a])。従って、顧客との価値共創を行おうとする企業は、この4Cアプローチを採用することでそれが可能となる。また、これは、企業がどのような価値共創を行っているかを分析する際にも有用といえる。4.2 価値共創マーケティングの具体的な展開 それでは、現実の企業はどのようにして価値共創に取り組むことができるか、或いは価値共創と行っているのか。ここでは、製造企業、小売企業、サービス企業について、それぞれの特性を踏まえつつ、価値共創の具体的な展開について考えてみる。(1)製造企業これまでみてきたように、消費者と離れた関係のもとでモノのマーケティングを展開してきたのが、理論的にも実践的にも製造企業である。従って、製造企業においては、顧客と直接的なサービス関係をどのように構築するかが極めて重要な課題となる。確かに、伝統的マーケティングのもとでも、マーケティング・チャネル政策の如何によっては、直接、顧客と接触することはあったが、残念ながら、そこでの関心はもっぱら顧客の購買を促すことに置かれていた。また、モノの修理等をアフター・サービスという形で行ってきたが、それは、あくまでも、モノを販売時の状態に戻す作業(価値の埋め込み直し)に過ぎない。価値共創マーケティングの展開で鍵となるのは、消費プロセスへの入り込みであり、それは、顧客の日常或いは生活への入り込みを意味している。しかし、もともと、顧客と直接的な接点のない製造企業が消費プロセスで一緒の関係を構築することは難しい。とはいえ、例えば、自社製品を購入し、使用しているまさにその顧客に、企業は、様々な手段でその使用方法を的確にアドバイスすることができるが、顧客の側からすれば、それは、企業からの直接的なサービス提供という新たな文脈のもとで行われる価値共創に他ならない。そして、こうしたことは、今日、情報化の進展によって、より一層促進される。周知のように、I o Tは、モノをインターネットで結ぶものであるが、多くの場合、それを使用する顧客がそこにいる。さらに、様々な情報端末器は、直接、企業と顧客を結んでくれる。従って、それらは、顧客とのサービス関係のもとで直接的相互作用としてのマーケティングを企業が展開することを可能にし、そこにおいては、顧客との様々な価値共創が実現する。こうした中、企業と顧客が離れた関係にあったB2Cの世界では、今日、その関心が一緒の関係へと向けられつつある。一方、B2Bにおいては、もともと「一緒の関係」が多くみられるが、最近では、インターネットを背景にこうした関係をさらに押し進め、消費プロセスへの入り込みを積極的に行っている企業が現れた。例えば、建設機械メーカーのコマツ(株式会社小松製作所)は、自社製品に情報端末器を付け、その使用状況を逐次把握し、顧客企業と情報共有することを通じて様々なサービス提供を行い、新たな価値が共創されている。(2)小売企業小売企業は、本質的に消費者と直に接触するにも関わらず、モノに焦点を置いた伝統的マーケティングをそのまま適用したことにより、むしろ、接点を排除する方向に向かってしまった。そして、その最高到達点こそが、スーパー業態である。セルフ・サービスという考え方を導入することで、消費者との接点を極力なくし、サービスを消費者自身に委ね、さらに、サービスをモノと同じように捉えることで、

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