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6中小企業支援研究とにあったと見ることができる。新規参入が容易であり、参入企業の急成長可能であることは、市場の構造が、寡占的大企業、それも自社内で基幹部品の生産を行う既存関連産業大企業の主導の下に展開されている、日本の電動アシスト車の市場構造とは大きく異なる。また、中国では、このような急激な新製品の生産拡大を支える関連部材産業も急成長し、部材供給でのボトルネックを形成することなく、新産業の急拡大、新規参入企業の急成長が可能になるということも示唆している。(4)中国進出した有力外資系企業事例4 A(中国)有限公司(A・ジャパン)(5)同社は、世界最大の自転車メーカー、台湾のA社によって、1992年に設立された、独資の自転車生産子会社である。中国国内市場向けの生産と、輸出向けの生産の双方の便宜を考え、それまで台湾の主要完成車メーカーや部品メーカーが進出していた広東省ではなく、華東の江蘇省昆山にあえて工場進出した。その意味で、同社はA社にとって、中国国内市場向けの戦略的生産拠点である。進出後15年経過した2006年時点で、昆山工場の自転車生産台数は、280万台前後で、中国国内向けが120万台で、後は日本向け50~60万台、残りが欧米向けの輸出となっている。同社は、中国内陸の成都にも工場進出し、年間40万台生産している。これは、中国の西部市場向けである。合計すると、外資系の最大企業であるA社の中国国内向け販売台数は160万台になる。販売台数では中国国内市場の1割以下のシェアといえる。ただし、中国市場での自転車が200元以下のノーブランド品から始まり、300元以上が中高級品と分類される中で、同社の製品は360元から600元の自転車を売れ筋としている。中高級品車市場では高いシェアを確保しているとは言える。このような中国国内での販売実現のために、同社は、中国国内に自社の専売店を660店舗、自社専用棚のある店舗を761店舗もっている。当然ながら、中国国内向けは自社ブランドであり、海外向けが米国の有名ブランドや日本子会社のB社ブランドが一部含まれるのとは対照的である。また、昆山の工場では、自社の進出の際に進出した台湾系の部品メーカーや、あるいは日系の部品メーカーの部品を多く採用しているが、同時に、フレームだけではなく、アルミリムも社内生産している。ただ、最近では地元の中国系の部品メーカーの水準も向上してきたので、浙江や江蘇の中国系メーカーの部品の採用も増えてきている。ただし、安全に関わる部品については、中国国内市場向けの製品についても、いまだ中国メーカーの部品を採用するには至っていない。(5)事例の示唆するもの以上の事例紹介から確認されたことは、第一に、国有巨大企業の寡占巨大企業としての存立の解体である。改革開放初期においても発展を続け、世界最大規模の垂直統合型の自転車メーカーとなった国有企業は、市場環境の変化についていくことができず、ブランドを維持している国有大企業であっても、その存立形態を大きく変え、1990年代以降に創業された民営企業に規模でも大きく差をつけられた存在となった。また、外資系企業で最も中国国内市場に浸透したA社の成功事例でも、国内市場高級品部分のみでの進出であり、中低級品の最も量的に大きな部分は国内民営企業群によって充足された。このことから見えてくるのは、国内外の中低級品市場での新興民営企業群の圧倒的優位性の形成であり、世界最大の中国の自転車生産を主導する主体は、新興の民営企業群だということである。2.中国自転車産業の展開から見えて きた中国産業発展の担い手以上の中国自転車産業の事例から見えてくることは、まずは、改革開放後の中国では、日々開拓される巨大な未開拓な市場が存在していること、しかし、既存国有巨大企業は市場変化への対応力のなさゆえ(5)A(中国)有限公司(A・ジャパン)については、A(中国)有限公司からの2007年3月13日の、また日本でA・ジャパンからの2007年2月6日の聴取りによる。

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