中小企業支援研究No4
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8中小企業支援研究れを充実させるためには金融機関関係者の目利き能力の向上が必要である。金融庁によれば、目利き能力とは「企業の将来性、技術力を的確に評価できる能力である。「融資の審査において、顧客の技術力や販売力等の定性面の勘案を含め、顧客の事業価値を適切に見極めるための能力」である。このためにはこれまで以上に経営支援担当者の育成・教育、金融機関の外部専門家・専門機関との連携を強化することが求められるのである。金融機関の職員が目利き能力を高めるためには、まず、「定量面の要素を審査する能力」を高める必要があり、このために、損益計算書や貸借対照表、収支計画を読み解く力を身に着ける必要がある。次に、「定性面の要素を審査する能力」を高める必要があり、このために、日頃から情報の収集に努め、入手した情報を活用する能力を身につけるとともに、人脈(取引先、地方自治体、商工会・商工会議所、各種団体等)を広げることが必要である(中小企業庁事業環境部企画課・金融課[2015]12ページ)。(2)金融機関の中小企業経営支援上の課題金融庁は2005年に「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」を公表した。この中で、中小・地域金融機関が取り組むべき事項として、「取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化」、「経営支援の能力の向上」を挙げていた。金融庁は現在も金融機関に中小企業経営支援を求めている。すなわち、金融庁の前述の金融検査マニュアルの中小・零細企業向け融資の項目の中に、「きめ細かな経営相談、経営指導、経営改善計画の策定支援等を通じて積極的に企業・事業再生に取り組んでいるか」、「ビジネスマッチングやM&Aに関する情報等、当該金融機の関情報機能やネットワークを活用した支援に取り組んでいるか」、「ビジネスマッチングやM&Aに関する情報等、当該金融機関の情報機能やネットワークを活用した支援に取り組んでいるか」、「ライフサイクル(創業・新事業支援、経営改善支援、事業再生、事業承継)に応じた各段階においてきめ細かい支援に取り組んでいるか」ということがチェックポイントとして挙げられている(41-42ページ)。金融機関の中小企業への具体的な支援方策については、中小企業経営支援リッキービジネスソリューション株式会社編[2015]、あおぞら地域総研株式会社[2016]等を参照されたい。金融機関の中小企業への経営支援は必要なことであろう。だが2015年8月に金融庁が公表した「地域金融機関の地域密着型金融の取組み等に関するアンケート調査結果等の概要」では、顧客企業のライフステージや持続可能性等に応じた経営目標の実現や経営課題の解決を図るための方策の提案力について、やや不十分とするアンケート先が17.5%、不十分とする先が8.6%あった。金融機関の中小企業経営支援には不十分性が残されている。中小企業金融の円滑化と金融機関の中小企業経営支援のためには中小企業と金融機関の関係性の強化が必要とされている。企業は、このためには、金融機関の「担当者交代時の、自社情報の丁寧な引継ぎ」や金融機関の「担当者の自社の業界知識の習得」を要望している。日常の取引の中で蓄積された企業の情報を金融機関内部で綿密に引継ぎ、担当者が企業の属する業界の知識を深めることで、企業の動向や将来見通し等のさらに一歩踏み込んだ情報提供が可能になると考えている。企業は「担当者との面会機会や面談時間の増加・拡大」も金融機関に求めている(中小企業庁[2016]319-320ページ)。中小企業経営の課題と解決策提示のための金融機関関係者の能力の向上が必要である。そのためには経営支援担当者の育成・教育、金融機関の外部専門家・専門機関との連携を強化することが必要である。外部との連携は特に経営資源が必ずしも豊富でない規模の小さな金融機関にとって有効である。このための仕組み作りが必要となる(みずほ総合研究所[2016a]128-129ページ)。金融機関が事業性評価や中小企業の経営支援を行

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