中小企業支援研究No4
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第二部パネルディスカッション【①パネラーによる個別事例の概要報告】株式会社ファーム・アンド・ファーム・カンパニー 代表取締役株式会社大田原ツーリズム 代表取締役社長、中小企業診断士藤井大介氏本日は「グリーンツーリズム」のお話しをさせていただく。私自身は栃木県大田原市でコンサル事業や食・惣菜等の農業を取り巻く周辺ビジネスを展開する別会社を設立していたが、日本有数の好立地を活かすべく市から農村でグリーンツーリズムを展開したいというお話しをいただいた。元来コンサルタントでもある私が全国を回り事業環境の事前調査を行い、運営組織体の編成を検討し事業計画を策定のうえ、平成27年4月に市との合弁で大田原ツーリズムおよび大田原協議会を立上げた経緯である。近年政府も観光に注力しており、とくに地方創生の旗印のもと農村観光はブームになっているが、それ以前から立上げていた会社である。オール栃木ということで私が社長に、副市長が会長に、メディア系や農協系の方々が取締役に就任し、社員は合計6名である。従来大田原市はブランド牛で著名となったが、最近はグリーンツーリズムでメディアに取り上げられるようなった。私はその仕掛けを取り仕切っていた。ただ見た目は一面田園地帯で宿泊所も何もないこの田圃に、如何に長期滞在を可能にすべく人を呼び込み巻き込めるのかということで検討を重ねた結果、地域資源を活用した体験を120程のプログラムに纏めた。また農家民泊も市内約120軒となり、さらに那珂川町や那須塩原市に広域展開している。今年度の観光交流人口は約8000人に到達し、インバウンドはその約3割を占めるものと見込んでいる。今後も農家民泊の増加を図り、最終的には人と人とのつながりによる観光交流人口の増加を目指す。株式会社みやじ豚 代表取締役社長NPO法人農家のこせがれネットワーク 代表理事CEO宮治勇輔氏本日は「みやじ豚」のお話しをさせていただく。当社は神奈川県藤沢市にある家族経営の養豚農家であるが、名物イベントとして大好評のバーベキュー(BBQ)を毎月1、2回開催し、毎回約150名の参加をいただき、常に2~3ケ月待ちの状況である。ゆったりとしたスペースに兄弟だけを一緒に飼うことによって美味しくなる豚を丁寧に育て、BBQで食べていただき、美味しかったらインターネットで購入を、もしくは飲食店の紹介を促し、さらにクチコミを活用する。みやじ豚という、湘南地域ではほぼない独自ブランドを展開する養豚農家兼店舗を持たないお肉屋さんという、地域オンリーワンの事業形態で順調に顧客を増加させ、今年で10周年を迎えた。父と弟が生産現場を、私はよそ者目線のプロデューサーの役割を担っているが、その本質は「如何に今ある資源を活かしてお客様に喜んでいただくか」の実現によって、受注し売上げにつなげていくことである。一例がこのBBQマーケティングであり、中小企業が取組んでいかなければならない差別化の一環である。ここでいう差別化とは「自らの特徴を複数組み合わせて、地域で唯一の存在になること」である。とくに画期的なことに取組むことではなく、あるものを如何に活用し自らの強みや地域の特長等を複数組み合わせることによって、必ず自らが一番になれる分野があるはずであり、そこで勝負することが重要である。戦略ということばがあるが、その意味するところは選択と集中である。何処で商売をするかを選び、そこに経営資源を集中的に投入する、これが強みの絞り込みであり、経営戦略=自らが勝てる分野で勝負することである。現在、農業界最大の課題は事業承継であり、これは地域の活性化にも通じることではないかと認識している。事業承継では、まず先代の強みを把握することで自分に受け継げる事業があることのありがたさを感じ、先代に対する尊敬と感謝の念を持てるようになることが大事である。地域内事業承継の要諦は、先代の強み、地域の強み、若者の強み=後継者の強みを組み合わせて新たなビジネスモデルを作ること、これが地域の活性化を実現するための方策であると考えている。活発な議論が展開されたパネルディスカッション14中小企業支援研究

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