中小企業支援研究No4
18/56

の必要性に迫られた。今回の調査事業で考えた方策内容が、今後の商業教育でも必要になるものと考えている。【②パネルディスカッション】(モデレーター:飯盛先生)飯盛:藤井さんと宮治さんの事例は、如何に地域資源を地域の活性化につなげるかという視点で、また鈴木先生とCUCの学生の皆さんの報告は、大学が如何に関われるのかという視点で、いずれも大変素晴らしい取組みであった。藤井:グリーンツーリズムにおいて、とくに優位性といえるものはなく、根性と努力の結晶である。根本的な問題として、地域には人がおらず私のようなよそ者が入りやすい環境要因もあったが、中心人物が如何に動くかが大事である。相当困難な状況の中で、正確な計画策定とその環境におけるヒト・モノ・歴史/文化の徹底的な分析、さらに、地元を歩き回る時間と地元の方々と「飲む」時間の確保=つながりを構築することが重要である。宮治:みやじ豚が地域資源と認識されたのは、ここ数年のことであり、最低10年は事業を継続することが必要ではなかろうか。地域から信用を得るためには、長く続けていくことが重要である。吉戸:「ヒト・モノ・カネ・情報」という地域資源を徹底的に知ることで強みが分かり、さらに、モノだけでなく信頼性を含めたヒトもつなげていくことが重要である。「この人なら信頼できる」という基盤が他の人もつなぐ力の源泉になる。ただし、地域資源を動かすには、実践の継続的蓄積が必要である。飯盛:確かに、地域資源の動かし方は実践しなければ分からないことが多い。よく分からないと思いながらも、実際に地域に赴いている方のお話しを伺うと、「それってよく分かる」というケースが多い。宮治:ファーストコンタクトが重要である。よそ者の目線で振り返ると、私も会社を退職して初めて家業に向き合った際、何か新しいことができないかと直ぐに考えて行動した。直ぐに始めず2年3年停滞していたら、そのまま流されていたであろう。そういう意味で、初めて見た事業の全体像に「何らかの違和感」や「こうした方がいいのではないか」という感覚は大事にすべきである。藤井:その感覚はとても大事であると同時に、統計データや歴史の分析も重要であり、信用性を増加させるものであることを補足させていただく。飯盛:地方創生において、地域の活性化に資する大学の役割に益々注目が集まる現在、実際に教員と学生が地域に赴いて、若者(学生)ならではの気づきや目の付けどころ、もしくは可能性について何か感じたことはあるか?鈴木:今回のプロジェクトでは、CUCの学生たちと協働してくれた地元の高校生の活躍も顕著であったが、特徴を申し上げると、年配者には思考できない柔軟な発想やセンスを発揮していただいた。JR久留里線の車両「キハ130系」からイメージされた「きはいさおちゃん」というオリジナルキャラクターは、袖ケ浦高校の生徒さんが考案してくれたものである。高校生には遊び心や面白そうなことをやってみたいという気持ちがあり、それが反映されたもので参加者から高い評価を得ることができた。飯盛:いろいろな可能性や価値があることは私も実践していてよく分かるが、これをさらに進めようとする際の課題や何らかの意識はあるか?鈴木:地域の方々とのコミュニケーションや組織づくりが大きな課題である。とくに地域の自治体や高校との連携の維持には腐心し、地域の方々と一緒にプロジェクトを完遂することは、簡単なようで実はとても困難であることが事実である。ただし今回、「ローカル線と古道歩き」のような、いろいろな形跡を残すことができた。それを地域の方々が主体となって踏襲・実践し、そこに教員と学生が参加する、あるいは支援する体制が整えば、存続する可能性は十分にあろう。地域の活性化に向けて、まだまだやりたいこと、やるべきことはあるが、相当なエネルギーが必要であるということも実感している。飯盛:勝浦市の総合活性化調査事業に取組まれた学生の皆さんが、勝浦市のお役に立てたと自慢できることを紹介して欲しい。大畠:勝浦市の方々は「できることはできる、できないことはできない」とはっきり意見を表明していただき、その反応に対して具体的な提案をすることができたと自負している。飯盛:今日、CUCや慶應義塾をはじめ、このような地域の方々と一緒に活動する「アクティブラーニング」が多数取組まれている。誰かに教えられるのではなく、主体的に学び主体的に判断することも、地域での学びであると考えている。地域と大学の連携を含め、よそ者・若者が地域の中に入り込むことによる可能性について、どのように考えているか?吉戸:よそ者でありかつ若者であるという「機能」をもった学生の皆さんには、とても大きな可能性があるはずであると強く感じている。16中小企業支援研究

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 18

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です