中小企業支援研究No4
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Topicsトピックス第4次産業革命への中小企業イノベーション千葉商科大学政策情報学部 教授藤江 俊彦21中小企業支援研究 Vol.41.第4次産業革命への潮流日本の企業は規模や業種にかかわらずアベノミクスといわれる経済政策により、ここ数年間でおおむね業績が改善したが、個人消費や設備投資は伸び悩んでいる。しかも米国でのトランプ新政権の誕生、英国のEU離脱、中国や新興国経済の減速などのグローバルな経済環境は不透明で読み切れない要素が多い。だが現在、世界のビジネスや産業動向の中で見逃してはならない潮流がある。たとえばセンサーを介してあらゆるものがデジタルネットワークで繋がるIoT(Internet of Things)や、集まった膨大なデータ情報(ビッグ・データ)を分析するAI(人工知能)の活用などである。これらをドイツでは「インダストリー4.0」、米国では「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」として国家を挙げて推進している。日本経済の基盤である中小企業は今、設備の老朽化、将来を担う人材の不足、事業承継問題、廃業増加、売上の伸び悩みなど深刻な課題に直面している。製造業では原材料調達から製造、物流までの関連事業を垂直型で系列化してきたが、そのビジネスのあり方が揺らぎ始め、またそれらを保護・規制してきた官庁の縦割り行政も様々な矛盾を露呈している。雇用面においても、非正規社員の増加とその処遇、長時間労働の問題が発生している。中小企業は従来型の改善や改革ではこれらの解決が容易にできなくなってきているのではないか。これまで中小企業のイノベーションは主としてプロダクト・イノベーションが多かった。例えば既存商品の大幅な改善、市場にとって新しい商品開発やサービスを導入することなどである。他方、プロセス・イノベーションとして、既存商品の製造方法やサービスの提供方法の大幅な改革にはあまり重点が置かれていなかったといえよう。(1)したがって注目される「第4次産業革命」の潮流では、むしろ後者の「プロセス・イノベーション」が求められている。それがIoTなどを活用した「インダストリー4.0」であり、また消費者やユーザーがウェブサービスを通じて、モノを所有するのではなく、必要なとき必要なだけ利用する、共有するシェアリングビジネスもその流れであろう。2.IoTによる「インダストリー4.0」2015(平成27)年頃からIoTが注目されるようになり、2016(平成28)年6月に内閣府が公表した『日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて』において、戦後最大の名目GDP600兆円の実現を掲げ、「今後の生産性革命を主導する最大の鍵は、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用する<第4次産業革命>である」というメッセージが述べられている。既に中小企業庁は『2016年版中小企業白書』でIT投資の有効性を示し、経済産業省の『2015年版ものづくり白書』でもITデータ活用企業の業績が好調であることを公表している。「インダストリー4.0」をドイツでは第4次産業革命と認識した。第1次産業革命は18世紀末から石炭、蒸気機関と鉄等によるエネルギー、機械設備、輸送・物流の変革と印刷の普及であり、第2次産業革命は20世紀初頭から電信・電話、石油・電力利用の大量生産、自動車・航空機の発達であり、第3次産業革命は20世紀末からのコンピュータ、デジタルテクノロジーの普及であり、そして現在IoTを活用し、

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