中小企業支援研究No4
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トピックス22中小企業支援研究サイバー・フィジカル・システム(CPS)でスマート工場による超効率的方式で高付加価値製品を製造、提供する産業革命が進行中との考え方からである。CPSとは現場の情報をデジタルデータに置き換え、集積したビッグデータをAIで分析し、最高度に効率的なモノの生産を実現するシステムである。すでにドイツではシーメンス、ボッシュなどがプラットフォームを設立、中小企業を包含するスマート化を進めている。また米国のGE、IBM、インテル等もインダストリアル・インターネット・コンソーシアムを設立、幅広い業種が参加を始めた。(2)3.中小企業はIoTにどう関わるかではドイツの中小企業はIoTにどのように関わっているのだろうか。ドイツでは日本と同様に中小企業の比率が全企業の約9割を超えており、優れた技術を持つ中小企業が多く日本以上に輸出割合が高い。海外との取引企業がIoT化を進め、大企業を含めたプラットフォームでつながり、超効率的に高付加価値製品を創出するビジネスモデルである。日本の例では静岡県三島市にある産業機器や医療機器関連の基盤実装(電子部品を装備する)やユニット組み立ての伊豆技研工業㈱は、都内にある㈱今野製作所からの誘いを受け、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)の「つながる町工場プロジェクト」に参加して取り組みを始めた。社内のIT改善チームはIVI紹介のITコーディネーターの助言で、部品在庫確認等で生産性を向上させ、サプライヤーと同一データの納期管理が可能になった。社内外に開示するデータとクローズドにするものを仕分けているという。(3)日本の中小企業でもIoT化を進め、プラットフォームに参加して業務プロセスを大きく変えるイノベーションによって、業績を向上させ企業を成長させることが強く求められているといえよう。4.シェアリングエコノミーと中小企業政府は『日本再興戦略2016』の具体的施策の中に「シェアリングエコノミー」の推進を挙げた。そこには消費者等の安全を守り、イノベーションと新ビジネスの創出の観点からサービス等の提供者と利用者の相互評価の仕組みや民間団体等による自主ルール整備による対応を述べている。シェアリングというのは基本的に物財を所有するのではなく、共有(シェア)することである。例えば米国で誕生したエアビーアンドビー(Airbnb)というウェブサービスは部屋の所有者がホストとなり、ウェブサイトで希望するゲストに1泊から貸すビジネスモデルである。サンフランシスコの人口密集地から生まれ、今ではテントや船等の多様な貸し出しをする。日本でも法人が設立され、外国人観光客などユーザーが増加しているようだ。また米国の配車サービス会社ウーバー(Uber)も自分が所有する車をホストとして、空き時間帯に希望者に提供利用してもらう。シェアリングビジネスは従来の物財の所有と消費を前提とした資本主義的発想と異なるもので、シェアリングエコノミーと呼ばれる。(4)基本的に多額の資本金を持たなくてもネット活用をベースにビジネスを展開でき、ベンチャーや中小企業に適したモデルである。自ら市場を世界に拡げることも可能であろう。シェアリングビジネスは従来の制度による産業基盤や企業と異なる発想で、供給者は需要サイド(ユーザー)が求める時に必要なモノやサービスを多用な選択肢から選んでもらい、提供する。需要サイド主導型のビジネスモデルなのである5.結びただし、中小企業は既存産業の仕組みを否定するのではなく、そこでの問題解決として、IoTの活用やシェアリングビジネスを進めるべきであろう。すべてインターネットでつながることはリスクでもあるが、逆に情報のシェアによって、個人や企業がルール破りすればネット・コミュニティの社会によってスポイルされかねない。リスクヘッジし、IoTなどで繋がって新しい領域を開拓することこそ、中小企業のイノベーションではないだろうか。【参考文献】(1) 中小企業庁『2015年版中小企業白書』中小企業イノベーション調査結果、三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱2014年12月実施(2) 『決定版インダストリー4.0-第4次産業革命の全貌』尾木藏人、東洋経済新報社、2016年(3) 「到来するIoT社会と中小企業」藁科和寿、『信金中金月報』通巻530号2016年、信金中央金庫(4) 『限界費用ゼロ社会―<モノのインターネット>と共有型経済の台頭』ジェレミー・リフキン、柴田裕之訳、NHK出版、2015年

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