中小企業支援研究No4
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XECUTIVE のですが、このうちの測温抵抗体のコアとなる温度を感知する部分である素子を内製化していることですね。特に白金測温抵抗体用の素子に関しては国内で唯一、巻線形素子、薄膜素子共に社内で開発、生産しております。熱電対というのは古くからある技術なのですが、作っている会社が多く、競合が多くて利益が出にくい製品なのです。それに対して、比較的低い温度領域で高い精度で温度を測定するセンサーである測温抵抗体の方は競合が少なく、より利益が見込めたので、工業用温度センサーの中でも、こちらを事業の中核にするために、先代社長が素子の内製化に取り組んだのです。素子の内製化を達成するまでには、おおよそ7~8年を要しましたが、ついに内製化に成功し、それを売りにして従前より多くの受注を得ることができるようになりました。また、製品の利益率が高まったことで、安定的に収益を出せるようになり、その収益で新たに静岡市清水区に工場を新設することができたのです。小坂 技術の内製化にかける先代社長の強い情熱を感じさせるお話ですね。林社長 当時、ドイツに非常に良い素子を作る企業があって、日本でその素子をライセンス生産する企業を探していたのですが、企業の規模等の理由から、当社は最終的に選ばれなかったのです。先代社長はそれが大変悔しくて、独力で素子を内製化したのです。でも、今思えば、それは成功するかどうかわからない社運を賭けた取り組みでした。小坂 先代社長は創業時に多くの困難に直面して、それを乗り越えられてきましたが、現社長もまた、事業を継承された後に、多くのご苦労があったのはないでしょうか。林社長 実は、先代社長は会社が始まって、23年目の年に交通事故で突然他界したのです。そのため、私は急遽、否応なく会社を継承せざるを得ない状況に追い込まれました。私は先代社長が亡くなる8年前に既に当社に入社していましたが、当時、まだ36歳でしたので経験が十分ではなく、事業を継承した当初は資金調達等で苦労したこともありました。しかしながら、私は特に、人に関しては恵まれてきました。当時から今に至るまで、社員は常に会社を盛り立ててくれましたし、取引先も色々協力して下さったので、そういった点では、今まで特に大きな苦労をした記憶はありません。技術志向は会社の遺伝子小坂 ものづくり企業としての御社の特徴はどのような点にありますか。林社長 社員の技術志向が強いことですね。社風として、これは面白そうだなと感じたことには、すぐに取り掛かってみる傾向があります。私自身もまた、事務系だけれども、先代社長と同じように技術に興味があって、何か人のやらないことをやってみようという思いを強く持っています。例えば、先ほどお話しした白金測温抵抗体は、巻き線型の抵抗素子なのですが、これを作成するにはどうしても人手がかかってしまいます。もちろん、数が増えれば、ある程度まではコストが下がるのですが、限界がありまして、この限界を破るためにはどうしたらよいかということをずっと考えていました。そこで、半導体の技術を利用して、今までのように線を巻くのではなくて、薄膜をセラミックの基盤の上に蒸着して、エッチングの技術で抵抗値を上げるという方法に気づいたのです。この方法なら各林電工㈱の工業用温度センサー等の製品群インタビューに答える林社長28中小企業支援研究

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