中小企業支援研究No4
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XECUTIVE 小坂 御社は取引先等に工場を積極的に公開されていると伺いましたが、それはどのような理由からですか。林社長 発注元である大手企業にとっては、自分たちが発注している製品がどのようなところで作られているか確認したいというお気持ちが強いようですね。例えば、年に1回程度というように定期的に工場にいらっしゃいます。そこで、私たちはすべてを包み隠さず、工場の製作現場をお見せするようにしています。当社はISO9000シリーズ、ISO14000シリーズ等は既に取得していて、現場の環境には十分に配慮していますし、そもそも他の方に見られて恥ずかしいようなところで作っている製品は売れないですからね。社長との毎年の面談が従業員定着化のカギ小坂 社員に対しての教育や意欲を高めるための取組等では、心がけていらっしゃることはありますか。林社長 勤続5年、10年、15年、20年、30年の節目に特別休暇と金一封を付与する勤続表彰制度があります。これは、先代社長の時代に社員の定着率が低くて、なんとか当社に長く勤めて頂く方法はないかと考えて創設した制度です。社員に長く勤めてもらえれば、製造部門の技術が蓄積されてきますので、製品の品質等が向上しますし、その他の部門においてもメリットは大きいです。その他に、当社は、毎年決算が終わると、会社の現状を社員に理解してもらうために、パート社員も含めた全社員を集めて、勉強会をやっています。また、毎年賞与を支給する際には、私自身が各事業所を回って社員全員と面談して会社の状況についての説明を行う、あるいは社員の近況を聞く取り組みも行っています。これも会社が創業して、数年後から始めた制度です。小坂 なるほど、そういった取り組みを継続することで、会社への関心とか会社との一体感が出てきますね。普段、社員の皆さんが会社の状況をわかってくれているなと感じる時はありますか。林社長 よくありますね。会社というのは運命共同体で、私も社員もいわば1つの船に乗っているわけですが、航海日和の日ばかりではなく、海が荒れることもあります。特に会社の経営状態が悪くて、賞与も十分に出せない時もあるわけですよね。そういう時、社員もうれしいはずはないのですが、状況を理解してくれるわけです。そうすると製造部門の社員は、自発的にコスト削減に取り組んでくれますし、営業部門の社員は、得意先への営業を頑張ってくれます。会社の危機感が、決算書の勉強や私との面談を通じて、社員に伝わっているのだと思います。小坂 企業のトップが、全社員と毎年面談するというのは、中小企業ならではの取り組みですね。ただ、規模的には可能だとしても、そのような取り組みを継続的に行っている中小企業は少なく、なかなかできないことだと思います。地方の工場に勤務する若い社員にとっては、社長と直接、話ができる機会はそうはありませんし、社長が社員のことを気にかけている事実を知るというだけでも大変うれしいのではないでしょうか。林社長 現在、当社の社員の定着率は大変良く、定年や家庭の事情等を除いて、中途で退職する社員はほとんどおりません。その一因は、当社のこのような風通しの良い家族経営的な社風によるものではないかと感じています。誠実・堅実・着実を大切に小坂 大変恐縮ですが、日頃心がけている経営理念等についてお教えください。林社長 少し気恥ずかしいので、社内に張り出した静岡工場内の様子30中小企業支援研究

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