中小企業支援研究No4
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Topicsトピックス中小企業の海外展開戦略~新たな活路を見出す鍵は、海外販路開拓~中小企業基盤整備機構・理事渡部 寿彦32中小企業支援研究中小企業の国際化支援に係る国の政策は、2010年に大きな変化を見せた。1980年代から中国やアジアの発展途上国の投資環境・外資政策等の情報提供、許認可、資金調達、人材確保等の課題解決や、進出後のトラブルに関する相談業務等は一部実施されてきた。しかし、国内企業の生産拠点の海外移転により国内産業が衰退するという、所謂、国内産業及び技術の空洞化につながるという考えから、積極的な支援姿勢はとられてこなかった。ところが、2010年の産業構造ビジョン2010において、「(前略)アジアをはじめとする海外新興国は、市場規模が拡大し、(中略)中小企業も大企業の受注生産に依存するのではなく、(中略)自ら成長する市場と繋がっていくことが重要となっている。(中略)こうしたことから、中小企業の国際化課題を克服するためには、海外展開の準備段階から、契約段階までを国内外で一貫して支援することが重要(後略)」という内容が閣議決定された。これを受け、政府主導により支援機関が連携したプラットフォームが整備され、中小企業の国際化支援が積極的に推し進められることになった。合わせて、同年、経済産業大臣を議長とする「中小企業海外展開支援会議」が設置された。会議の参加機関は、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)等の海外展開支援機関に加え、国内の支援に軸足を置いてきた政府系金融機関、中小企業基盤整備機構(以下、中小機構という。)、日本商工会議所等も参加した。これにより、初めて中小企業の海外展開を支援するプラットフォームがつくられたのである。そういう意味では、中小企業の海外展開支援が本格的に開始されてから、まだ5年程度である。したがって、国際化支援機関や一部の機関を除き、中小企業を支援する側にも十分なノウハウや支援人材、さらには海外とのネットワークを有するとは言い難い状況にあったが、この会議以降、各機関の支援力が急速に強化されたといえる。さらに、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略により、今後5年間で新たに海外展開を行う中小企業1万社を支援するという数値目標が設定された。現在、各機関が得意分野のノウハウを生かしながら、政策目標に向かって支援に取り組んでいるところである。昨年2月には、中堅・中小企業がグローバル市場開拓、事業の拡大を図るため、支援機関が集結した「新輸出大国コンソーシアム」もつくられ、工業製品だけではなく、食品、サービス、コンテンツ産業までに支援分野の拡充がなされた。そのような中、中小企業における海外展開の目的も、これまで主体であった『生産拠点設立』から、成長する海外マーケットでの『販路開拓』へと変化している。中小機構が行っているF/S(事業化可能性調査)事業を例に、中小企業の海外展開の実態を見てみると、従業員20人未満の小規模な中小企業が全体の5割、5人未満が2割を占めており、従来では見られなかった小規模な中小企業の海外展開が増加している。さらに、海外展開の目的も7割が『販路開拓(輸出含む)』となっており、『生産拠点設立』を目的とした企業は

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