中小企業支援研究No4
37/56

2015年度より新たに「小規模企業白書」が年次刊行物として発刊されるなど、小規模事業者をあらためてクローズアップする動きがここへきて着実に広がっている。こうした動きが広がっている背景の一つに、中小企業のなかでもとりわけ規模の小さい小規模事業者の業況が、相対的に厳しい状況にあることが挙げられる。信金中央金庫 地域・中小企業研究所が全国の信用金庫の協力を得て四半期ごとにとりまとめている「全国中小企業景気動向調査」の集計結果をみると、中小企業の景況感を総合的に表す業況判断D. I. 1は、全体としては2008年9月のリーマンショック直後をどん底として、その後は今日に至るまで緩やかな回復傾向を維持しているように見えるものの、これを従業員規模別にみると、規模が小さいほど相対的に厳しい水準で推移し続けているのが実態となっている(図表1)。また、「全国中小企業景気動向調査」に付随して毎年10~12月期に実施している特別調査「来年の経営見通し」における「自社の業況が上向く転換点」の直近の集計結果をみても、全体として「すでに上向き」といった前向きな回答の増加傾向が確認できる一方で、「業況改善の見通しは立たない」とする厳しい回答の割合はほとんど減少せず、しかも従業員規模が小さくなるほどその回答割合が顕著に高く、規模の小さい事業者ほど構造的に厳しい状況に置かれているという実態を垣間見ることができる。ちなみに、これを業種別にみると、小規模事業者のウエイトが相対的に大きい「小売業」や「サービス業」といった業種で、「業況改善の見通しは立たない」という回答割合が相対的に大きいといった傾向がみられるのも大きな特徴となっている(図表2)。2.個別にみれば業況の良い小規模   事業者も必ず存在以上述べてきたように、総じて厳しい状況にある「小規模事業者」ではあるが、回答状況を個別にみてみると、業況を「良い」と回答している小規模事業者が、いかなる景気局面においても業種にかかわらず一定数存在しているのもまた事実である(図表3)。例えば、直近の2016年10-12月期調査では、有効回答14,245件のうち、業況を5段階の中で最高の「良い」と回答した中小企業は417件(全体の2.9%)を占めるが、これを従業員規模20人未満の小規模な事業者に限ってみても、有効回答10,222件(全回 1 業況(5段階)について「良い」と回答した企業の割合(「良い」と「やや良い」の合計、構成比)から、「悪い」と回答した企業の割合(「悪い」と「やや悪い」の合計、同)を差し引いて算出する指標(備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所「全国中小企業景気動向調査」(2016年10-12月期 特別調査)をもとに作成図表2 自社の業況が上向く転換点35中小企業支援研究 Vol.4

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 37

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です