中小企業支援研究No4
54/56

『中小企業支援研究』編集委員長前田  進52中小企業支援研究本誌も、第4号の発刊を無事に迎えることができました。これもひとえにご寄稿いただいた皆様のご協力、ご支援の賜物と深く感謝申し上げます。本号の巻頭では、本学経済研究所長 橋本隆子先生より、「日本の起業支援」について、欧米諸国、とりわけ米国の現況と比較して、社会制度、社会風土の変革の必要性についての示唆をいただきました。本学 藤江俊彦先生からは、今後の生産性活動の鍵として2015年頃から注目されているIoT技術を活用して、「中小企業のイノベーション」をどのように進めるべきか、その方策について、ドイツの事例を取り上げながら示していただきました。中小企業基盤整備機構理事の渡部寿彦様からは、中小企業のアジアを中心とする新興国への海外進出の展望とそれへの有効な支援策について示していただきました。特に、これまでの「生産拠点の設立」という視点から「現地での販路開拓」の段階へとシフトしていることをあげ、とりわけ大手企業ではなく従業員5人以下というような小規模企業の取り組みが増加している現状を紹介していただきました。そして、本学名誉教授の齊藤壽彦先生からは、中小企業への資金面の支援として、これまでの担保、保証に拠らない「事業性評価」に拠る金融支援の重要性と、その前提となる経営支援に関わる金融機関自体の能力の向上の重要性について示していただきました。信金中央金庫の鉢嶺実様は、2014年に制定・施行された「小規模企業振興基本法」の中でクローズアップされている、小規模企業の事業の「持続的発展」のキーワードとして、「強い想い」とそれを実現する「イノベーション」の2つが重要であるというご報告をいただきました。これらのご報告、ご提言の共通するキーワードは、中小企業、小規模企業を対象とするこれまで以上にきめ細かい支援と、その現実的な課題ということではないかと思います。この視点は、これまでの製造業中心とは異なる、小売・サービス業の産業上のウエイトが高まってきたことも底辺にあると思われます。本号では、そのような背景を受けて、中小企業、小規模企業を対象に、起業から始まって成長、発展まで、どのように支援し育て上げていくか、そして力ある産業を育てた後にいかにそれらの事業を承継していくかという視点で、それぞれの角度から貴重なご示唆をいただくことができました。さらに、東京農業大学の木村俊昭先生より、今話題の「地方創成」について、その成功の方程式について解説をいただきました。最後に、本号でも、いずれも経営者の「強い想い」と時機に敏感な「イノベーション」の積み重ねによって事業を成長・存続してきた企業経営者や、力強くたくましい事例企業をご紹介することができました。本誌が中小企業、小規模企業支援の一助となれば幸いです。編集後記

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 54

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です