中小企業支援研究No4
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5中小企業支援研究 Vol.42.金融機関の中小企業経営支援の現状(1) 金融機関の中小企業経営支援の内容現在、中小企業に対する金融機関の経営支援が中小企業からも金融機関側からも求められている。金融機関は企業に資金提供を行うだけでなく、企業の経営課題についての対応を行うコンサルティング機能を発揮することが期待されている。金融機関は企業の発展段階に応じて経営上の提案を行うことが期待されており、このことが金融機関の収益向上につながるとされている。金融庁は地元の中小企業等の顧客基盤を中心とした融資サービスを提供するとともに、地元顧客を良く理解することで、経営状況が悪化した企業に対して有効な経営支援を行っている地域銀行が安定的な経営を実現していることを指摘している(金融庁[2016c]25ページ)。中小企業における金融機関の経営支援サービスの利用状況を見ると、「諸制度の情報提供」、「販路・仕入先拡大支援」、「財務・税務・法務・労務相談」を挙げる企業の比率が高くなっている(みずほ総合研究所[2016a]80ページ)。(2)金融機関の中小企業経営支援の効果金融機関の中小企業経営支援の効果について検討してみよう。みずほ総合研究所のアンケート調査によれば、金融機関は自社の成長のための課題を把握していないと考える中小企業が相当の比率で存在している(みずほ総合研究所[2016a]128ページ。『中小企業白書』310ページ)。金融庁の地域金融機関利用者に対するアンケート調査では、4分の1以上の企業が金融機関の目利き能力がやや不十分あるいは不十分であると回答している(金融庁[2015])。金融庁の中規模・中小企業を中心とする企業ヒアリングおよびアンケート調査によれば、企業は地域金融機関に対して「融資の金利条件」以上に、「自社や自社の事業への理解」、「長年の付合いによる信頼関係」を求めているが、金融機関に対して「経営上の課題や悩み」を全く相談していない企業が一定数存在し、小規模企業ほどその割合は高くなっている(金融庁[2016]28ページ)。企業ヒアリングでは約3割の企業がメインバンクとまったく相談したことがないと回答しているが、その大きな理由は「あまりいいアドバイスや情報が期待できない」というものであった。アンケート調査では約45%の企業がメインバンクとまったく相談したことがないと回答しているが、その大きな理由は、「他に相談相手がいる」ということとともに「あまりいいアドバイスや情報が期待できない」というものであった。企業と金融機関との信頼関係に限界があったといえるのである(金融庁[2016a])。金融機関による中小企業経営支援サービスによる貢献度合については、金融庁の調査によれば、メインバンクと相談して支援を受けたことがあると回答した企業の約8割が、「財務内容の改善」等、なんらかの効果があったと回答している。金融機関によるコンサルティングが有効であることがうかがえる(金融庁[2016a]、金融庁[2016c]29ページ)。だが、企業が求める情報と金融機関が企業に提供する情報の間にはギャップが存在するという問題点があった。すなわち、企業は「業界動向」、「取引先の業界動向」、「公的支援策に関する情報」等自社の事業に直結する情報を求めているが、金融機関は「経済・金融・国際情勢」等の一般的な情報や「金融商品に関する情報」等を提供する傾向があるのである(金融庁[2016c]29ページ)。みずほ総合研究所の調査によれば「再生支援」、「社内体制整備支援」、「経営計画・事業戦略等策定支援」、「財務・税務・法務・労務相談」、「製品・サービス開発支援」、「人材育成支援」において効果があったとする企業の比率が高くなっている。だが、「販路・仕入先拡大支援」については、「効果があった」とする企業が43.6%あった一方で、「効果はなかった」とする企業の比率も20.4%と比較的高くなっている。中小企業への金融機関の経営支援サービスの提供

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