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う。製品・商品などの在庫や、厨房機器や加工機械など汎用性がある設備は、比較的、譲り渡しやすいと考えられる。そうした経営資源を保有していることが多い業種、つまり、卸売業、飲食店、宿泊業、製造業などでは譲り渡しの割合が高くなるのではないだろうか。 そこで、どのような経営資源がどれくらい譲り渡されているのか、詳細調査の結果から確認してみよう。図表2は、それぞれの経営資源を譲り渡した企業の割合をみたものである。「従業員」が12.3%と最も高くなっており、「機械・車両などの設備」が9.1%、「販売先・受注先」が6.9%、「製品・商品」が6.4%と続いている。「免許・資格」「のれん・ブランド・商標」「特許・実用新案などの知的財産」など、保有していた企業が相対的に少ないと思われる経営資源を譲り渡した企業の割合は低い。 それぞれの経営資源について、業種ごとに譲り渡した企業の割合をみると、経営資源の性格によって譲り渡しが行われやすい業種とそうでない業種があることがうかがえる。従業員では、「卸売業」(22.7%)、「飲食店、宿泊業」(18.4%)、「情報通信業」(17.5%)で割合が高い。これらは図表1でみた譲り渡した企業の割合自体が高い業種である。機械・車両などの設備では、「運輸業」(18.2%)、「製造業」(17.7%)、「建設業」(13.9%)など、設備の所有が事業の基盤となる業種で譲り渡しが行われた割合が高い。販売先・受注先では、「卸売業」(15.9%)や「情報通信業」(13.1%)で割合が高く、いわゆるB to Bの事業では譲り渡しが行われやすいことが示唆される。製品・商品では、「製造業」(17.7%)、「卸売業」(15.9%)、「小売業」(12.8%)で割合が高かった。経営資源の譲り渡しの効果と課題 経営資源の譲り渡しを支援するにあたっては、廃業する企業にとって譲り渡しが意味のあるものでなければならない。経営資源を譲り渡した企業に譲り渡しに満足しているかどうかを尋ねると、「満足している」が45.1%、「どちらともいえない」が図表1 経営資源を譲り渡した企業の割合(事前調査)資料:日本政策金融公庫総合研究所「経営資源の譲り渡しに関するアンケート」   (2017年)(以下同じ)(注)事前調査における詳細調査の調査対象について集計したもの。図表2 経営資源ごとの譲り渡した企業の割合(詳細調査)(注)1事前調査における譲り渡した企業と譲り渡していない企業の構成比よりウエート値を     算出し、詳細調査の値に重みづけを行った結果を示している。   2従業員や資金、負債の譲り渡しがあるのは、M&Aや事業譲渡などのように他の経営     資源とともに譲り渡すケースがあるためである。39中小企業支援研究 Vol.5

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