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基調報告  ………………………………………………プッシュ型事業承継支援高度化事業全国事務局プロジェクトマネージャー(PM)ミライWOつなぐ経営研究所 代表 魚路剛司氏■はじめに本日のシンポジウムテーマには「事業承継支援に対する考え方」が含まれていることを踏まえ、前半では、国の事業承継支援の取組みの軌跡・動向について言及し、後半では、本日大勢ご参加いただいている支援機関(行政機関・金融機関・士業等)の皆さまと、事業承継支援に対する考え方・取組み方(※)について「目線合わせ」をさせていただきたい。■国の事業承継支援の推移【① 深刻な中小企業経営者の高齢化】2015年からの2025年までの10年の間に、70歳を超えてしまう中小企業や小規模事業者の経営者が約245万人に達する見通しである。現在、中小企業数は約381万者といわれており、その3分の2の経営者が70歳超という現実を迎えようとしている。さらに、約半数の127万人には後継者が未定であるというデータが国から公表されている(図1)。従って、喫緊の課題は、日本経済の屋台骨を支えてきた中小企業の漸減解消である。しかも、2015年当時の中小企業経営者の年齢分布の最高値は66歳であるが、2018年のそれは68歳位となる。先述の70歳は中小企業経営者の平均退任年齢であり、自ずから数年で、その平均退任年齢に迫る見通しである。また、全国事務局のPMとして地方各地を訪問しているが、危機的状況を実感する。人口及び事業者数の減少が顕著であり、後継者不在による倒産や廃業が進展しており、危機感を持った地方自治体(県)が急増している。そのような経緯から、国は各県に予算配分し、地域経済の衰退を食い止め地方創生に役立てる、その前提として『事業承継』をキーワードに掲げた政策を立案し推進していく意思である。【②事業承継ガイドラインの10年ぶりの改正】国が事業承継を繰返し声高に唱えるようになったターニングポイントは、平成28年12月の「事業承継ガイドライン」の10年ぶりの改正があると考えられる。とくに、早期・計画的な取組みを促進する中で『「60歳」を着手の目安』と、中小企業経営者の年齢を限定表記した国の発出は極めて異例であり、その進捗現況への焦燥や打開への決意と受け止められる。なお、2017年データでは、その平均年齢は59.5歳であり、平均退任年齢70歳までの約10年間で事業を承継して欲しいとの要請も感じられよう。【③事業承継ネットワーク構築事業】前年の骨格となるガイドラインの改正を受け、平成29年度施策として事業承継ネットワーク構築事業が展開された。これは、地方自治体(県)を中心として、地元の中小企業が抱える事業承継の問題に対して、金融機関・商工会議所・士業等専門家等が「かかりつけ医」として事業承継に対して経営者に“気づき”を与え、地域に拠点を構える中小機構地域本部・事業引継ぎ支援センター・信用保証協会等の支援機関が一体となって連携して(オール千葉)、課題解決に向けて取組むスキームである。しかし、その過程で行われた事業承継診断における質問項目「会社の10年後の夢について語り合える後継者候補はいるか」「候補者に対して会社を託す意思があることを明確に伝えたか」に対する回答を通じた、当事者間のコミュニケーション不足は深刻であった。また、千葉県も含めた活動実施19県・45,852の診断件数(参画機関数1,123)に対して、事業承継診断ヒアリングシートの実施機関数が592(52.7%)に留まったことは課題であり、さらに、「専門家に繋いだ件数」1,219(2.7%)は極端に少なく、つまり「出口戦略」ができていなかったということである。とくに、前向きと評価できる「今後対応が必要な件数」が15,484(33.8%)に対して、「支援の必要なし」が21,823(47.6%)と約半数に及んだことは、次年度の課題となる。■プッシュ型事業承継支援高度化事業前述した平成29年度事業承継施策を受け、平成30年度事業承継施策(①事業承継補助金、②事業承継税制拡充、③プッシュ型事業承継支援高度化事業(以下、「プッシュ型」という))の開始に至る。とくに、事業承継の課題解決に寄与するものと期待されるプッシュ型について概観する(図2)。全国事務局のもと、都道府県を中心として事業承図1 平成28年総務省「個人企業経済調査」、同年㈱帝国DBファイルから推計9中小企業支援研究 Vol.6

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