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なお、前述した社内の「キーマン」は、以前から私の健康問題を承知し心配してくれていたこともあり、契約締結前には周知しM&Aによる事業の継続を前向きに受け入れてくれた。山川 買手先の選定基準は?監物 当社の社内文化を尊重し、従業員の立場が保証される環境で『一緒にやっていこう!』と言っていただけることを最も重視した。山川 買手先が現れるまで経営面での影響は?監物 M&Aの仲介を依頼したからそれで終わりということではなく、経営には手を抜かずに日々淡々と業務をこなしていった。山川  M&A実行後の社内体制の状況は?監物 新社長は買手先(同業他社)の社長が兼務され、管理者は常勤(出向)されている。実行後の約1カ月間は別々の会社が一緒になることで現場に活力が生まれた半面、「仕事のやり方」で双方議論が起こることもあった。そのような際には、私と新社長で都度話し合いを行い、「早急にならず、相互に尊重して進めていく」という原点を確認し合いながら軌道修正を図ることで、より強固な信頼関係を構築することができた。業務の引継ぎも比較的短期間で終了し、現在は引退して身体を休ませることもできており、とても良い生活環境で毎日を過ごせている。山川 センターへの相談時と事業譲渡後を比較してM&Aに対する考えや思いに変化は? 監物 センターに相談後、直接2社紹介いただき協議するも不調に終わったが、『当社の事業に興味を持ってくれる会社がある』との気づきは印象的であった。その後センターから、M&A仲介業者の御社(㈱経営承継支援)を紹介いただき、約半年後に順調に成約に至ったが、66歳でM&Aによる事業承継を決意してから5年の月日を要したように、決して簡単なことではなかったと実感した。山川 私生活を含めた人生観の変化は?監物 これまで私の肩にのしかかっていた「(会社経営や従業員雇用に対する)責任」の二文字が取れ、心身ともに軽くなり正直“ほっ”としている。が、毎日が日曜日になるのも如何かということで、現在コンビニエンスストアでアルバイト(週3日・1日4時間)をしているが、大変刺激的である(笑)。山川 最後に皆さまへのメッセージを。監物 後継者問題を抱える経営者は大変多いと思うが、M&Aはその問題解決の有効な手法であることを伝導する役割を果たしていただきたいと願う。パネルディスカッション…………………………モデレータ:千葉商科大学経済研究所 中小企業研究・支援機構長 商経学部准教授 鈴木直志【①パネルディスカッション】鈴木 高齢化社会の加速度的進展が見込まれるが、10年単位の長期的視点に立った事業承継支援の方法や体制整備への課題は何か?魚路 「かかりつけ医」(=支援機関)と経営者との対話力の向上が挙げられる。全国を巡回すると、事業承継支援に対する地域間の「温度差」(危機感⇔やらされ感)を実感するが、現場における関係性の日々深化は課題解決に重要である。また、予算配分を受けた基礎自治体(市町村)が、中小企業診断士等の専門家を雇用して課題解決に取組む等、事業承継支援の「“地域特性をいかした”自走式」体制の構築に向けた動きが散見され始めたことは、望ましいものと評価できる。梅澤 図3の②×④の象限(第Ⅲ象限)にある中小企業からは、企業規模や財務内容の脆弱性から事業承継支援によるフィーの獲得が困難で、金融機関等の民間(支援機関)の関与が希薄になる現状がある。従って、国の予算配分によって、中小企業に対する「ドアノック(事業承継診断)」が促進されるべく、専門家を含めた民間に対しても、フィーの獲得等何らかのインセンティブが付与される仕組みの構築が必要である。また、“やる気のある”地方自治体や商工会議所等に対する「傾斜的な重点支援」も有効策である。井上 事業承継やM&A等、経営者の高齢化に伴う支援策から抜け落ちている視点、つまり、経営者自らの「経営目的」の認識の欠如がある。当然「事業の継続」という使命感もあろうが、「自らの生きがい」「生活資金の獲得」を優先し、事業を止めるに活発な議論が展開されたパネルディスカッション14中小企業支援研究

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