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はM&Aで買収する等の取組みが必要となろう。質問 プッシュ型への取組みの熱量が都道府県により差があるようであるが、機能している都道府県には何らかの特徴があるのか?魚路 プッシュ型への取組みに積極的である都道府県では、参画している全ての「事業承継ネットワーク構成機関」に対して、都道府県の担当職員がプッシュ型への理解を深めるべく“汗をかいて”説明するための巡回ができている。そのような都道府県では、入口の事業承継診断から出口の事業承継支援までの一気通貫で、多くの関与が為されている。質問 センターでのM&A支援件数が近年増加しているが、その要因となっている「エンジン」は何であるのか? 梅澤 M&A支援事業は、平成27年7月から開始して4年目を迎えるが、相談件数・成約件数ともに下表の通り順調な増加傾向を示している。業務内容を周知し、「譲り渡し/譲り受け」希望の双方の経営者から相談を受け、マッチングから成約に至るまでに概ね半年から1年を要すが、その間の「情報の蓄積及び提供」の有効性が認知されてきている結果であると考える。質問 小規模事業者ほど経営者への依存度が高くなる傾向があるが、それに伴ってM&Aの難易度も高くなるのか?梅澤 私見であるが、陳腐化した業種・業態や財務状況の悪化(債務超過)、また、全ての機能が経営者に集中し従業員も少人数というケースでは、M&Aの成約は相当困難と判断せざるを得ない案件も正直ある。しかし、優良な取引先(商流)や技術力等の「光るもの」が堅持され、また、経営者が体力の続く限り「事業引継ぎ」への信念を持って会社に残留し、知的資産(ノウハウ等)を継承する前提があれば望みがあるので、積極的に関与する意向である。総括  ………………………………………………………千葉商科大学経済研究所 中小企業研究・支援機構長商経学部准教授 鈴木直志千葉商科大学経済研究所では、毎年、中小企業の喫緊の経営課題をシンポジウムのテーマに掲げているが、今年のテーマの決定には、前職((独法)中小企業基盤整備機構)の上司(現職:中小企業事業引継ぎ支援全国本部)との企画相談の際に受けたアドバイスによる示唆があった。それは、『昨年から事業承継支援の“潮目”が変わった』との言である。中小企業庁「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ケ年計画)」(平成29年7月)によれば、今後5年間で「事業承継ネットワーク構成機関」による25~30万社の事業承継診断を実施、また、「事業引継ぎ支援センター」によるM&Aマッチング件数も5年後には2,000件を目指す、という高い目標が設定された。従来の事業承継支援は、国(主体:中小機構)による集中支援であったが、支援対象が多すぎることから必要以上に時間を要するため、昨年から都道府県に予算配分等ある程度主体を移し、今年はプッシュ型の開始によりさらに拡充させた。然るにプッシュ型とは、支援体制の集中型から分散型への移行である。さらに、今回の企画では「千葉県」という、よりローカルな方向に焦点を絞ることで、より効果的な訴求が見込めるとの判断から、センターの梅澤様には事例報告とパネルディスカッションにご登壇いただき、支援体制が集中型から分散型に移行したことを意図をもって強調した。また、M&Aによる事業承継について、秘密事項やナーバスな問題があるにもかかわらず、譲り渡し側の貴重な事例報告を拝聴する機会に恵まれた。ご紹介いただいた梅澤様、及びご報告・ご登壇いただいた監物様と山川様に、心より感謝申し上げたい。最後に、事業承継は今日最大の経営課題であり、経営者の高齢化の加速度的進展を深刻に受け止め、今回ご参加いただいた支援機関(行政機関・金融機関・士業等)の皆さまとの間で、課題解決に向けて構築された協力体制(オール千葉)に本学も積極的に参画することを表明して、本日のシンポジウムの纏めとしたい。参加者からの熱のこもった質問16中小企業支援研究

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