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トピックス19中小企業支援研究 Vol.6い。中小企業を金融面で支える協同組織金融機関にもその姿を確認できる。第5回(10月)講義では、栃木県真岡市を地盤とする真岡信用組合の常務理事・豊田光弘氏(本学卒業生)より、協同組織金融機関の立場から職員・顧客間の直接的なコミュニケーションの重要性を伺った。近隣の那須信用組合との合同貸出FSなどの取り組みには、地域密着金融の深化の可能性があった。各経営者の皆様のお話を伺うと、十人十色それぞれ異なる目標に向かって企業を発展させていく姿がみられた。答えは決して1つではない。いろいろな企業があっていい。ただ、それらの多くに共通してみられるのは、どの経営者も「経営理念」を非常に大切にされていることだ。そしてその「経営理念」をどのようにして従業員の共通理解にできるか、について大変腐心されていた。第6回(11月)講義でお越し頂いた株式会社諏訪商店は、千葉県内でお土産・特産物の販売を行う「房の駅」 を展開している。同社代表取締役・諏訪寿一氏は「1 大切にする、2 カタチにする、3 高める」という自社の経営理念を従業員に浸透させるべく、「やます道徳」と呼ばれる独自の社員教育プログラムを構築されていた。続く第7回(12月)の講義でお話し頂いた株式会社ライフィ代表取締役の澤田努氏も、経営理念を大切にされている経営者であった。インターネット専業の保険代理店という、まさにデジタル社会と向き合う企業であったが、その現場にはアナログ経営が徹底されていた。数年前に東京中小企業家同友会に参加するようになってから、「人を活かす経営の実践」に経営者として進むべき道がはっきり見えたという。2015年から人を活かす理念経営へと明確に舵を切った同社は、現在飛躍的な成長を遂げている。経営理念の実践を目指し社員が自走して成長する組織、その好循環を支えるのは、従業員同士の積極的な意思疎通まさにアナログ経営であった。デジタル社会の一側面として、企業の意思決定にビッグデータが活用できるようになる点をあげれば、かかる統計データの科学的分析を積極的に取り入れてきた中小企業の事例がある。今年度の最後の回(1月)に登壇された株式会社オオクシである。同社は、千葉県内を中心に6ブランド48店舗の理美容室を直営店で展開している。その特徴は独自のPOSシステムによる徹底したデータ管理であり、経済産業大臣賞など様々な賞を受賞されている。しかし、同社代表取締役の大串哲史氏は、講演の中で安易な数値の取り扱いは危険だと繰り返された。従業員のやる気を引き出すためには、「数字に温かみを持たせる」ことが重要であると説き、そこでも経営理念の共有がカギになることが示された。今年度の一連の講義は「デジタル社会におけるアナログ経営」という共通テーマの中で行われたが、そこで登壇された多くの経営者が向き合っていたのは、従業員や顧客といった「人との関係」だった。また、フロアから出る質問の多くも、人手不足・人手確保の問題だったり、人材育成のあり方だったり、顧客の組織化だったりといった、企業に出入りする「人との関係」に関するものが多かった。人手不足、人材育成、社員間の意思疎通、顧客の囲い込み、取引先との関係、地域社会とのつながり等々、中小企業の「人に関する問題」は、枚挙に遑がない。しかしながら、これらの問題と真摯に向き合い、さまざまな工夫を模索してきた企業が大きな飛躍を遂げていることは、今年度の講義で見てとれた。優れた会社 → 優れた人材の育成・確保 → 優れた商品・サービスの提供 → 顧客、取引先、地域社会からの高い評価 → さらに優れた会社への飛躍、といった好循環を生み出すための秘訣はどこにあるのだろうか。23回目をむかえる来年度(2019年度)「CUC中小企業マネジメントスクール」では、「優れた会社は人を呼ぶ」というテーマを掲げて、中小企業が抱えるさまざまな「人に関する問題」を取り上げる。かかる問題に独自の取組みを行ってきた中小企業経営者の講演を通じて、ぜひ受講生の皆様と経営革新のヒントを探ってまいりたい。⇒「2019 CUC中小企業マネジメントスクール」の受講生を募集しています。詳しくは千葉商科大学ホームページをご覧ください。

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