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INTERVIEW転換期の到来と不動産事業への進出新垣:店舗を減らしていった背景を教えてください。木田:一言でいえば、スーパーをはじめとする小売業の経営環境が非常に厳しい、ということです。当社の商売は、まず土地を買って、その上に店舗を建てる、というのが特徴です。初期投資を行い、毎月支払う家賃等の固定費を削減することによって他店と勝負してきました。西船橋店は駅前の好立地でしたが、競合店との競争が激しく、スーパーとしての経営は厳しかったため、スーパー事業の拡大は断念せざるを得ませんでした。しかし、当時、周辺の人口が増加し、地価も高騰していましたので、当社の資源である土地の有効活用を検討し、スーパーを撤退してビル化し、不動産事業に進出することを決断しました。新垣:それで御社の事業概要に不動産業が掲げられているのですね。木田:それでも、先代(8代目)がはじめた小売業から完全に撤退するわけにはいきませんでした。その後、2011年3月の東日本大震災の影響で新浦安店を閉店し、現在の2店舗体制となりました。世界に広がる植物工場事業の展開新垣:第2の転換期でしたね。今度はどのような決断をされましたか。木田:現社長が5年ほど前から新たに植物工場をはじめました。スーパーをはじめとした小売業界で中小・零細の店舗が生き残っていくのは厳しいだろうと予測して取り組みをはじめたのです。ここ10年の小売業界を振り返ってみると、まさにその通りになりました。新垣:予想が的中しましたね。植物工場はどのように展開されているのでしょうか。木田:植物工場は、現社長(9代目)と私の弟がマネージャーとしてリードしており、キーワードは「安心安全」です。しかしその背景には、農家の担い手不足や気候変動による露地栽培野菜の価格高騰があります。植物工場の野菜は、価格変動リスクに対応しようとする飲食店等から多くの引き合いがあり、やりがいを感じています。おかげさまで、当社は、結球レタスの栽培技術で特許を取得しており、全世界からオファーがくるようになりました。前田:具体的にはどこの国からでしょうか。木田:中国の深圳で合弁会社を設立していますし、フランスのパリでは使われていないトンネルでの事業可能性評価の依頼があります。タイでは700店舗を展開している大型飲食店への納入のオファーがきています。新垣:植物工場というと採算割れで苦しんでいる例も多いようですが、当社が事業として成り立っているのはすごい技術ですね。木田:そこが当社のノウハウです。大学と共同研究を進めながら、工場建設のほか、このノウハウを新たな工場建設に役立てるためコンサルティング事業も手掛けています。木田屋北栄店の店頭歴史の重みを感じさせる昭和40年頃の貴重な資料21中小企業支援研究 Vol.6

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