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XECUTIVE 本業 スーパーマーケット事業の革新新垣:御社は惣菜事業でも話題となりましたね。きっかけはどのようなことですか。木田:本業のスーパーと関係性の深い事業として10年前に250円の“ニコマル(250)弁当”をはじめ、いまでは毎日4000食を提供するまでに伸びています。当社は、元々米問屋だったため、安く仕入れるルートがあり、自社内で精米加工しています。ご飯を低コストでおいしく炊けるということと、スーパーが母体である強みを活かして、肉・魚・野菜を新鮮で安く仕入れられることが強みです。スーパーには各部門のスペシャリストも揃っています。この仕組みを他のお弁当屋さんが真似するのは、簡単なことではありません。ですが、どの事業も革新の連続でした。弁当事業は最大10店舗まで拡げたのですが、現在は5店舗です。縮小している背景は、出店地区でビルの大型化が進み、次第にビルのなかで昼食を済ませるようになってきたことが一因です。またビルのセキュリティ強化に伴い、ターゲットである会社員がビルの外に弁当を買い求めることが減ってきています。そこで2~3年前からは弁当の小売りだけではなく、卸し売りにも力を入れはじめました。しかし、地価、原材料費、人件費の3つが高騰し、近年では人手不足も深刻化しており、経営は決して順風満帆というわけにはいきません。そのため250円という価格を維持することが難しくなり、2014年の消費税改定(5%から8%への引き上げ)に合わせて、税込250円から税抜250円へ、実質上の値上げをしました。そのときには残念ながら顧客離れを経験しました。新垣:今度はどのような革新をされたのでしょうか。木田:苦渋の決断でしたが、それからは250円という低価格帯の弁当だけでなく、1000円台の高価格帯の弁当も売り出すようにしました。当初はニコマル弁当という看板のもとで並べて販売していたのですが、高価格帯の販売が伸びず、新たに”米丸(こめまる)弁当”という看板で業態を変えました。ここでは高価格帯弁当のなかに、250円弁当を置いています。ニコマル弁当では、250円弁当のなかに高価格帯弁当をおいていましたので、お客様への見せ方を逆転させたのです。これをきっかけに事業は軌道に乗りはじめました。サラリーマンの平均昼食代が500円のところ、当社では700~800円のお弁当が売れ筋です。新垣:切り替えの早さが御社の強みですね。木田:弁当事業は、スーパー事業の延長線にあったため、比較的早めに切り替えることができました。一方で不動産投資は莫大な資金を必要とするので、8代目と9代目はかなり激しい議論をしていました。8代目は無借金経営を目指していたのですが、9代目は、将来を見据えて方向転換を図りました。当社は必ずしもすべてにおいて切り替えが早いわけではありません。議論を尽くし、慎重にアクションを起こしています。戦中育ちの8代目と戦後育ちの9代目とでは気質が違っていましたが、やはり多角化をしなければ、大企業にのみ込まれてしまうという意識は共通していたのだと思います。新垣:多角化を進めながらも、事業の核となるスーパーをしっかりと続けてきたわけですが、まだまだ変わっていかなければならないのでしょうか。木田:私は幼い頃から祖父(8代目)に10代目として育てられてきました。その思いを受け継いで千葉商科大学に進みました。卒業後は他のスーパーで修業をした後、当社を継いでいくのだという意気込植物工場で生産したレタス22中小企業支援研究

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