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XECUTIVE ているが、山梨はネクステックとして海外に打って出るという野望を持っている。更に、人材の多様性に対応して社員が辞めない職場にすること、また60歳以上の社員が働ける職場にすることと同時に若者を積極的に活用していきたいと力強く述べたが、山梨自身は「一番の楽しみは営業」と語った。理由は「悩みのヒントを頂けるから」と明るく語る関係創造型経営者の今後が楽しみである。おわりに親族外承継のパターンは「従業員等」「第三者」の2つ(図表5)であるが、デメリットに挙げられる①後継者の資金力、②個人債務保証の引継ぎ、③買い手の選択の3つが大きな壁となっていると考えられ、資金調達や信用保証に関する課題を解決する必要がある。中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(事業承継円滑化法)は、「相続税の課税についての措置」、「民法の特例」、「金融支援」の三本柱で支えられている。金融支援に関しては、中小企業信用保証の拡大に加えて、日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例で代表者個人に対して株式・事業用資産の買収資金、相続税・遺留分滅殺請求への対応資金、等の調達を支援し、また後継者不在等による企業買収への融資を実施している。個人債務保証の引継ぎに関しては「経営者保証に関するガイドライン」が制定されている。ここで、山梨が杉本社長の肝煎りでアサヒ工業に転職してから親族外承継で事業を引き継いだとしよう。先代の協力を得ることでステークホルダーの理解を得やすいが、通常のサラリーマンには株式や事業用資産等を取得するための資金が無い。会社の貸し付けを受ける、または金融機関から資金を調達することが必要となるが、会社の資金繰りの悪化や住宅ローン以上の借入れに対して家族の同意が得られるかが問題となる。更に、会社の債務に対する経営者保証を提供するとなると、家族の同意を得ることが益々難しくなるため事業承継が不調となることが懸念される。本事例の場合は、SRGタカミヤが全株式を取得して連結子会社とした後に山梨を出向させていることで、株式や事業用資産の引取り資金や個人保証を山梨が負う必要が無くなる。更に、先代経営者は株式の売却金を受け取り、SRGタカミヤは自社の強みとアサヒ工業の独自商品を結合させることで既存市場・新市場にイノベーションを起こすことが可能となる、Win-Winの関係を築いた。このように、サプライチェーン内のM&Aは相手を探す時間が節約され、相互に満足する事業承継が実現する。事業承継は当社だけを対象として考えるのではなく、地域内の他社との繋がりやサプライチェーン内の繋がりまでを承継の対象に広げることで経営者や後継者候補個人に負担を掛けることなくスムーズに事業承継が出来る、という筆者の考えを明らかにする好事例である。しかしながら、今回の「CUC社長サミット」で山梨と出会い話を聞くことで、後継者には関係性を創造する力が重要であることを改めて認識した。筆者が企業診断の際に経営者や従業員の方々と接する際にはこの点にも着目し、また、後継者教育の点でも関係性を創造する力を向上させるようなアドバイスや指導を意識するよう心掛けたいと考えている。■インタビュア青木靖喜……千葉商科大学経済研究所客員研究員千葉商科大学非常勤講師中小企業診断士図表4 ステンレス製型枠「弁慶」出所:2018.3.29 ネクステック報道資料図表5 親族外承継のメリット・デメリット出所:平成30年度版事業承継支援マニュアルより 筆者加工■会社概要商  号………株式会社ネクステック事業内容………土木・建築用仮設機材の販売およびレンタル設  立………1986年12月8日資本金………2千5百万円年  商………6億7千万円(H30.3月期)従業員数………25名(男性18名、女性7名)本  社………大阪市北区大深町3-1グランフロント大阪 タワーB27階        東京営業所、東北営業所、伊賀工場、奈良工場URL…………http:www.nex-tech.jp/28中小企業支援研究

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