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【評論】2中小企業支援研究破壊的イノベーション時代の技術政策青山学院大学名誉教授港 徹雄1.破壊的イノベーション筆者が『日本のものづくり競争力基盤の変遷』(日本経済新聞出版社刊)を上梓して7年の歳月が過ぎ去った。本著書で筆者が最も強調したかったのは、日本のものづくりの競争力を支えてきた高度な下請分業システムは20世紀末からの三次元ICT革新によってその競争優位性が大きく低下し、代わって、研究開発投資が我が国産業の国際競争力を最も有意に説明する要因となっていること。したがって、研究開発投資を拡大し、イノベーションの連鎖を引き起こす産業システムへと転換しなければ、我が国は「経済大国」としての地位が維持できないという事実である。実際、我が国輸出産業の競争力(輸出特化度)を、「外注システムの利用度」と「研究開発投資」という2要因から分析すると、製造大企業の業種別の外注比率と輸出特化度(当該業種の輸出額シェア/当該業種の生産額シェア)の相関係数は1987年の0.849をピークに1998年には0.709へと低下している。他方、我が国製造業の売上高に占める研究開発投資比率と輸出特化度との相関係数は1990年代末までは0.611と低かったが、2006年には0.913と著しく説明力を高めている。21世紀においては、研究開発投資なしには国際競争力が確保されない状況にある(図表1参照)。図表1 外注比率及び研究開発費比率と輸出特化度との相関係数の推移外注比率R&D比率資料出所:『(商)工業実態基本調査(各年版)』『科学技術研究調査報告書(各年版)『外国貿易概況(各年版)』 外注比率 R&D比率1971年 0.6662 0.31141981年 0.7128 0.62581987年 0.8496 0.61311998年 0.7098 0.61112006年 0.9133

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