2019_RSS webbook
40/64

調査報告5.3 先進的中小企業(事例6) 株式会社大川印刷(横浜型地域貢献企業プレミアム企業)(神奈川県)FSC認証紙とノンVOCインキの使用拡大、CO₂ゼロ印刷等、環境に優しい印刷を展開している。近年はSDGsを経営の軸として従業員を動機付けて、従業員が開発した「SDGsを忘れないメモ帳」に対するニーズが高まっており、環境指向を評価され新規取引にも結実している。さらに、持続可能な調達の潮流を睨んで、会社案内の作成を検討する企業にSDGsの取組の掲載を提案している。全売上の環境印刷での実現を目標としている。(事例7) 有限会社穂海(ほうみ)農耕・株式会社穂海(「未来につながる持続可能な農業推進コンクール」GAP部門農林水産大臣賞)(新潟県)穂海農耕は水稲の栽培を、穂海は近隣生産者の米穀の集荷・販売と農場経営のコンサルティング等を行っている。国内で初めてJGAP(GAPは、持続可能な農業用の生産管理システム)を米作に導入し、田植えや収穫の時期が異なる多くの品種を生産している。GAPには、品質管理と環境・人権面での適切性についての順守事項も含まれ、従業員が無理なく農業でのCSR、即ち「持続可能な農業」を実践している。穂海では、GAP認証のコンサルティング等を通じて、人材育成にも貢献している。この他、山間部での米作等を通じて地域貢献にも注力している。こうした地域貢献の継続には補助金等の公的な支援が必要であるが、業績は黒字基調で推移しており、今後もCSR産業としての農業をリードしていきたい。(事例8) サラヤ株式会社(ジャパンSDGs アワードSDGs推進副本部長(外務大臣)表彰)(大阪府)当社は、家庭用及び業務用の洗浄剤・消毒剤等の衛生用品と薬液供給機器、甘味料等の開発・製造・販売を営んでいる。ヤシ油を原料とする「ヤシノミ洗剤」を開発したが、2000年代に入りアブラヤシの無秩序な伐採による生物多様性の破壊を環境団体が批判し、「ヤシノミ洗剤」のブランドイメージの毀損につながっていた。このため、2005年に日本企業として初めてRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟し、2012年以降、パーム油を100%RSPO認証付きに転換した。2020年を目標として完全分離方式のRSPO認証油を全ての自社製品に使用する方針である。加えて、2006年に設立した「ボルネオ保全トラスト(BCT)」で「緑の回廊プロジェクト」を行っている。ヤシノミ洗剤等、BCT支援対象製品の売上の1%を財源として、森林を保護・回復し生物多様性の維持・回復に貢献している。この活動が消費者に支持されたこともあり増収が続いている。MSAについては、JICA等の公的性格の強い組織、自社の事業との関わりが深いNPO、NGOとの連携を重視している。これからの事業機会として、第一にウガンダで「100万人の手洗いプロジェクト」、「病院での手の消毒100%プロジェクト」等のBOPビジネスを実施している。第二に、中国原産の甘味料の原料を、産地の契約農家に対して農薬の使用方法等を指導した上で購入し、原料からエキスを抽出する工場を建設した。これによって、現地の遺伝資源の保全、現地雇用を通じた経済発展、及び健康によい製品を生産するためのサプライチェーンを構築している。また、国内の大手不動産会社のオフィスビルに納入する薬用石けん液等について、RSPO認証付きの製品に対する需要が最近急増している。これは、オリンピック・パラリンピックへの対応が一因と推測され、顧客が行う持続可能な調達に当社が協力することも重要な経営課題と考えている。5.4 行政・公的機関と非営利組織(事例9)ニセコ町(SDGs未来都市)経済・環境・社会の三面で「持続可能なまちづくり」を目指している。中小企業に関連するSDGs推進上の課題・取組をみると、経済面では地域経済循環と『稼ぐ力』の強化が課題であり、観光目的税導入の検討、創業支援・企業進出支援による域内経済の自律的循環の強化に取組んでいる。環境面では、省エネルギー、再生エネルギー導入の促進、資源循環が課題であり、ニセコ駅前への面的地域熱供給の導入、38中小企業支援研究

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 40

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です