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中小企業の知的資産を強化する地域資源を活用した企業間連携が生み出す価値創造のプロセス堀内 仁千葉商科大学経済研究所客員研究員・中小企業診断士はじめに中小企業地域産業資源活用促進法(地域資源活用促進法と略して表記)が、平成19年6月に施行され、国の支援制度が始まった。施行以来、約14,000件にわたる地域産業資源が都道府県知事により指定され、地域産業資源活用として1,333件の事業計画が認定されている(平成27年2月中小企業庁発表値)。本レポートは、その代表的事例について、その傾向と有効性を考察した。戦後の高度経済成長期、人口と共に企業数は増加した。しかしながら、1986年535万企業数をピークに、その後は減少傾向にあり、2014年に382万企業数に減少、内中小企業は99.4%(380万者数)、小規模事業者は85.8%(325万者数)である。最近5年間の中小企業・小規模事業者の推移は、約40万者減少。倒産件数は減少しているが、休廃業・解散件数は高水準で推移しており、特に小規模企業の廃業が多い1。企業規模別の労働生産性の推移を見てみると、小規模事業者と大企業・中規模企業の間の格差が広がっている2。中小企業とりわけ小規模事業者の労働生産性向上が課題となっている。2018年版小規模事業者白書によると、課題解決に向けた取組みとして、企業間連携と事業承継による事業機会を捉えた事例が報告されている。企業間連携は、一社当たりの経営資源に乏しい小規模事業者にとって、業務効率化及び付加価値向上の有効な手段であると結論づけている3。地域資源を活用する多くの事例は、企業間連携を促している。本レポートは、地域資源を活用し企業間連携を果たしている事例を取り上げ、その事業価値創造のプロセスを考察し、その有効性を報告する。まず、「地域資源とは、」地域資源をどう捉えるか、法制度上の定義と支援法を確認する。国の支援制度とその事例を踏まえ、3つのビジネスモデルを検証し、そのプロセスを考察する。地域資源活用を旗頭に、複数の事業者が連携し、互いの強みを増大し、弱みを補完し合い中小企業の活力増大につなげるプロセスを体系づけた。知的資産経営の視点で、企業価値増大化を図る、その成功要因を考察した。Ⅰ. 地域資源を活用した企業間連携が付加価値をもたらす。企業が事業を興す時、狙う事業領域を模索する。「誰に、何を、どう提供するのか」自社の持つ強みを踏まえて新しい市場を括り直す。そして、事業の継続を果たすために、地域に根付くことが発展的な課題となる。経営資本に限りがある中小企業にとって、更に地域資源を事業資産に変換させ、事業を発展させている事例が見られる。その成功要因は、地域資源を活用した事業資産づくりをテーマに、事業目的を共有し企業間連携を進めていることにある。企業間連携が重要課題となる。知的資産経営の視点から、企業間連携が、企業の持つ互いの強みを開示し増幅させ、弱みを補完する。人的資産づくり、関係資産づくりを進め、組織としての構造資産をつくる。企業間連携は、関係資産づくりの強化になり、戦略的課題となる。図表1に、地域資源を活用した企業間連携と事業発展のプロセスを示した。1 総務省「事業所・企業統計調査」、「平成21年経済センサス-基礎調査」、総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」、総務省「平成26年経済センサス基礎調査」再編加工2 中小企業庁.2018年版小規模企業白書 41頁から3 中小企業庁.2018年版小規模企業白書108頁から調査報告41中小企業支援研究 Vol.6

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