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事例報告【報告テーマ】千葉商科大学経済研究所客員研究員・中小企業診断士赤上 順啓経営理念の実力2.当初の実態(図表2参照)事業主や従業員に優れた美容技術も無く、経営の事も知らない一主婦が、親戚や知り合いもいない土地で、資金も無いので全て借金しての創業だった。その店舗は狭く、十分な機器・什器もなく、従業員も学校出たての純真な(無知な)乙女であり、教育しながらの営業を余儀なくされた。また、ターゲット客層が不明確で、集客に関しては中途半端な立地といった悪条件下での開業なので、売上は80万円/月であり、人件費、家賃、材料費、水道光熱費、その他経費を引くと店主の給料も出ず、赤字が続いていた。1.はじめに経営は図表1で図示できると考えている。「経」とは縦軸の事。孫子の「五事」の一番目「道」すなわち道筋、目標、信念等であり、考え方、哲学である。一方「営」とは経を実現させる方法、技術、科学である。経営理念は「経」を明文化したものといえる。零細美容室が身の丈に合った経営理念を構築し、その内容を吟味し、具体的行動に移すことによって成長していく状況を紹介する。経営理念の実力を理解して戴きたい。経:縦線→軸、方向、目的→    意図→フィロソフィー(哲学)      これが経営理念の基(何を・何故)営:経を実現させるための方法    →テクニック→サイエンス(科学)      (いつ・何処で・誰が・どの様に・いくらで)図表1 経営のモデル図項目内容ⅰ)事業主高校卒、美容師資格取得後、6年間零細美容室で勤務し、27歳で結婚。3年後退職10年後、夫の転勤を機に社会貢献を目指し、美容室開業ⅱ)立地親戚・知り合いゼロ。繁華街の外れ、住宅地に遠い。駐車場なしⅲ)資金なし。材料ディーラーに機器・什器・薬剤等(約1,200万円)借金ⅳ)店舗・設備バックルームを入れても14坪。最小限の機器・什器ⅴ)美容技術事業主の技術未熟、加えて10年以上のブランク。従業員は学校出たて図表2 当初の実態3.経営理念の構築とその結果(図表3参照) ⑴ 初めの経営理念「他店との差別化」「社会に何かを貢献をする」という思いを掘り下げて「貢献の内容は何か」「何が出来るか」を十分検討し、「お客様第一主義を貫く」を構築した。その為の行動は*お客様をお姫様として接する *上質の言葉使い(敬語・丁寧語・謙譲語)他店では味わえない「優越感」「癒し」「丁寧で高級な接客」でご満足戴くことが社会貢献の一つと考えた。その結果、14坪の店舗で3人の美容師での作業ではさばき切れない程顧客が増えたので、隣接する店舗も借りて36坪に店舗拡張し、従業員も7名に増員して、お客様の御不満を解消することとした。47中小企業支援研究 Vol.6

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